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 8 はじめての魔法






 がホグワーツに入学することになったきっかけは、一通の………と言わず、十通、二十通、もしかしたらそれ以上かもしれないほどおびただしい数の、入学許可証だった。


 まるで嫌がらせのように毎日欠かさず届いたそれらを、ことごとく放置していた
 しかしとうとう向こうが業を煮やしたのか、とある日の真夜中という非常識極まりない時間帯に、一人の大男が押しかけてきて。
 半ば無理やりに入学が決定してしまったのだ。


 そんな経緯のせいなのか、とにかく入学最初の一週間である今現在において、おそらくは学校一、自分が魔女だという自覚に乏しい生徒に違いない。

 確かに、ハグリッドが言うところの不思議な出来事というものは、昔、自分の周りで起きたことがある。
 けれどその記憶は何故かどれもおぼろげで、ましてやハリーのようにしょっちゅう何かを起こしたり、またその出来事の証明となるようなものを持ち合わせているわけではない。
 自分の中に普通の人とは違う何かがあるとはなんとなく認めていたが、それが魔法だとか自分は魔女だとかという話になると、とんと現実味が薄れてしまうのだ。

 そのためは、入学から数日が経とうとしている現在、周囲からどことなく浮いた存在となってしまっていた。
 もとより無口で、独りでいることを苦痛に感じないの行動も、ますますそれに拍車をかけていると言えなくもないだろう。

 その状況にいち早く気づいたのは、お互いにとって初めての友達であるハリーで。


「大丈夫? 


 自分自身も学校中の好奇の目に晒されうんざりしているにもかかわらず、ハリーはのことを気づかって声をかけた。
 しかし。


「なにが?」


 本人は本気で何もわかっていなかったらしい。
 相変わらず淡々とした口調で、首を傾げて見せた。
 そうしてそれをはたで見ていたロンが、


「やっぱり変な奴だ、理解できないよ」


 と、ハリーにこぼしたのは言うまでもない。
 しかし、そんな不可思議人間のレッテルを貼られかけていたにも、とうとう自分は魔女なのだと否が応でも自覚せざるを得ない機会がやってきた。


 それは、初めての変身術の授業でのことである。

 担当教師はグリフィンドールの寮監でもあるマクゴナガル先生だった。
 彼女はやはり厳しい先生で、授業が始まってから少しもにこりとすることはなかったが、その腕前はとても鮮やかですばらしいものだった。

 見本を見せてもらい、一通りの講義を受けてノートをとり終わると、次は一人一人に一本のマッチ棒が配られた。
 マクゴナガル先生は、このマッチ棒を針に変えることが課題だという。

 さっそく教わったとおりに実践しだすグリフィンドールの一年生たち。
 しかしはすぐに杖を取ることはせず、しばらく周囲を観察していた。


「だめだ、ちっとも変わりゃしないよ!」

「………なんでサイズが大きくなるのさ」

「うわあっ、火がついた!」


 三者三様、人それぞれ。
 しかし圧倒的に多いのは、何の反応も見られないという結果らしい。
 一番変化を来しているのは、ハーマイオニーのマッチ棒らしいのだが。

 は自分の手元に視線を落とすと、おもむろに杖を持ち上げた。


「だめだ、うんともすんとも言わないよ………。、君のほうはどう?」


 前の席にロンと並んで座っていたハリーが振り返る。
 それにつられるようにロンも身体をこちらへ向けて。
 今まさに杖を振ろうとしていたは、二人に向かってこう答えた。


「今やってみるところ」


 味も素っ気もない、なんとも簡潔なその答え。
 しかしその言葉の後に起こった出来事に、ハリーもロンも目を丸くすることになった。

 ぼそぼそと呪文を唱え、無造作に杖を振り下ろした
 すると次の瞬間には、テーブルの上にきらきらと銀色に輝く、一本の細い縫い針が転がっていたのだ。


「……………」

「―――っすっごいよ、!」


 無言でその元マッチ棒を見下ろしているに代わり、歓声をあげるハリー。
 ロンも、どうして一発でできるのさ、と感心している。
 当のはやはりのん気に、さあ? と首を傾げていたけれど、その騒ぎに他の生徒たちもなんだなんだと身を乗り出し、見回っていたマクゴナガル先生までたちの机に近づいてきた。


「すばらしいですよ、ミス・。完璧です」


 がマッチ棒から変化させた縫い針を摘み上げ、他の皆にも見えるようにそれをかざす。
 ほんのついさっきまで木と火薬が原材料名であったとは思えないほど、その光沢は明らかに金属だった。


「さあ、皆さんも練習を続けなさい」


 クラスメイトの成功に士気が上がったのか、マクゴナガル先生の一言に自分の作業に戻った生徒たちは、より一層熱心に呪文を唱え杖を振りはじめた。



 そうして授業が終わる頃。

 結局その授業のうちにマッチ棒を針に変えることができたのは、ともう一人、ハーマイオニー・グレンジャーだけだった。



 こうして、往生際悪くも自分が魔女だということに一抹の不審を抱いていたも、とうとうその事実を認めざるを得なくなったのである。

 が、だからと言って、次の日から彼女の行動が何かしら変化するなどということはありえないわけであって。
 相変わらずのマイペースでわが道を行く

 だからなのだろうか。皆が期待に胸をふくらませていた闇の魔術に対する防衛術の授業を受けたとき、彼女一人だけが落胆せずにすんだのは。

 闇の魔術に対する防衛術のクィレル先生は、良く言えば繊細、悪く言えば引け腰で小心者で変な人だった。


「ぬあっ!? なんだよこの匂い」


 一番初めに扉を開けた生徒が奇声をあげる。
 そしてその後ろで怪訝な顔をしていた全員も、すぐ後にその理由を知ることになった。

 ものすごいニンニク臭。
 締め切った部屋の中に、脳髄をダイレクトに刺激する濃厚な匂いが充満している。
 まるで色でもついていそうなこの匂いは、触れたら最後、服といわず髪といわず、身体全体に染み付いてしまいそうな気さえした。

 まだ比較的純粋な一年生たちは、誰もがこの部屋に入ることをためらったのだけれど。
 しかし、授業が始まってはそうも言っていられない。
 鐘のなるぎりぎりまで粘り、グリフィンドール一年生たちはしぶしぶ中に足を踏み入れたのだ。

 そして、なんとか全員が席についてしばらくしないうちに、クィレル教授のご登場となった。


「み、み、み、皆さん、こんにちは………。や、闇の魔術に対する……防衛術の授業に、よ、ようこそ」


 その話し方は、まるで壊れたスピーカーのようだとは思った。
 もしかしたら喉か口かに何かが詰まっているのかもしれない。

 きょろきょろと忙しなく泳ぐ目、震えの伴う小刻みな動き。
 挙動不審という言葉が良く似合う。

 しかし、その虚弱そうな見てくれとは裏腹に、彼の語る話は実に壮大だった。
 例えば、アフリカの王子直々にそのターバンを賜るきっかけになった、やっかいなゾンビを倒したとかいう話……だとか。

 そう、そのすぐ後の、詳しく聞きたいと言うシェーマスの質問から逃げるようにお天気の話しなど始めなければ、確かに壮大だったのだ。


 ―――やはり魔法使いにも、ピンからキリまでいるらしい。

 これが、闇の魔術に対する防衛術の授業でが最初に得た、そしておそらく最後になるであろう最も役に立つ知識だった。


 ところが、ピンからキリまでという表現は、何も魔法使いだけにとどまるものではない。
 もちろん教師にも、色々な人がいるわけで。

 魔法薬学の担当教師セブルス・スネイプ教授は、魔法使いとしては間違いなく優秀だった。
 が、優秀なスポーツ選手が優秀な指導者になれるわけではないのと同じように、教育者としての彼はお世辞にも優秀であるとは言いがたかった。特に、グリフィンドール生にとっては。


「元気出せよ、ハリー。フレッドもジョージも、スネイプにはしょっちゅう減点されてるんだ」

「うん………」


 ロンの励ましに返す返事も元気がない。
 ついさっきの魔法薬学の授業で、スネイプ教授から受けた二点の減点を気に病んでいるのは明白だった。
 一緒に帰り道を歩いていたも落ち込むハリーを見やって。


「誰もハリーのせいだなんて思ってないわ。むしろあれだけあからさまな態度だと逆に清々しい」


 まるで感心しているかのように言う。
 あれほど大っぴらに一人の生徒を目の仇にできるなど、並みの人間にできることではないだろうと思うのだ。
 それに、手を挙げたハーマイオニーに対するあの徹底した無視。
 これには、それまで学校とは疎遠な生活をおくっていたでさえ、一体彼は何を血迷って教師になったのだろうかと疑問に思わずにはいられないほどだ。

 しかしそのの言葉に、ロンが信じられないという顔をする。


「清々しいだって? 、君本当にそんなこと思ってるのかい?」

「影で中途半端にされるよりマシだわ。ただ、スネイプ先生は純粋にハリーのことを見てるわけじゃなかったみたいだけど」


 はそれだけ言うと、二人を置いてさっさと先に歩いていってしまった。
 その後ろ姿を見送って、ロンが呆れたように首を振る。


「マシ? あんなのをマシとか言える神経を疑うよ。しかもハリーのことを見てるわけじゃないって、さっきの何を見てたらそんな事が言えるんだ?」


 どうやらロンの中のに対する株は、急降下傾向にあるらしい。


「きっと、自分一人だけスネイプに注意されなかったからなんだぜ。まったく、優秀な奴ってうらやましいよな」


 ロンの愚痴にハリーは、はそんな子じゃないよと呟いたけれど、うらやましいと言うのは同じだった。

 スネイプのお気に入りらしいマルフォイ以外で、唯一注意を受けなかったのがだったのだ。
 スネイプはことあるごとに生徒の作業にダメだしをしていたけれど、の机の前まで来たときには、忌々しげに鼻を鳴らすだけで通り過ぎていった。
 それにはグリフィンドールのメンバーだけではなく、スリザリンも目を丸くしたものだ。

 結局ハリーの口からはロンの励ましも虚しく、大きな溜め息が漏らされたのだった。





2006/01/10 up

授業が始まりました。
ヒロインはどうやら意外と優秀なご様子。


――― 勝手にうんちく いちがつとおか ―――

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