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 7 おしゃべりな ○○






 扉を開けるとそこは夢の国…………ではなく屋外(っぽい場所)でした。







 スネイプに連れられて、再びハリーたちのもとへと戻ってきた
 学校側の準備ができたら呼びに来ると言い置いて出て行っていたというマクゴナガル先生は、が戻ってきてしばらくしないうちに再び姿を現した。


「さあ、行きますよ。組分け儀式がまもなく始まります」


 相変わらず厳しい声でそう告げる。
 たち一年生は、指示に従って一列に並びマクゴナガル先生の後について扉をくぐった。

 その瞬間、目の前に広がるありえない景色。

 確かここは城の中ではなかったかと思ったのだけれど、頭上に広がっているのは星のきらめく暗色の夜空で。
 しかも炎を灯した蝋燭が何千本も、ふよふよと空中を漂っているではないか。


「本当の空のように見えるように魔法がかけられているのよ」


 少し後ろのほうでそんな声が聞こえる。
 がちらりと振り返ってみると、どこかで見たような覚えのある女の子が話していた。

 はしばし考えてようやく思い出す。
 彼女は確か、行きの列車の中であった子だ。
 たしか、ハーマイオニーとか名乗っていた気がする。
 ハリーとロンがいろんな話をしていて、自分はそれを聞いていて、そこにひょっこり姿を現したのだ。
 そう言えばもう一人、ネビルとかいう気の弱そうな男の子と一緒だったように思ったが、あまり覚えていなくて首をかしげた。

 そうこうするうちに、一年生の列は広間の中央をずんずん進んでいく。
 両脇にある長机の上にある金ぴかの皿とゴブレットがきらきらと輝いているのを見て、はポツリと呟いてみた。


「………骨董屋なら言い値で買い取ってくれそう」

「え?」


 のすぐ前を歩いていたロンが、きょとりとして振り返る。
 なんだか今、他の皆があげる感嘆や驚嘆の声とは、一風違った内容の呟きが聞こえたような気がしたのだけれど。
 しかし当のはと言えば、そんなロンの訝しげな視線を受け止め、しれっとした顔で。


「なんでもないわ」


 そう答えると前に視線を戻し、黙々と歩き出す。
 そうされたロンは前を行くハリーに顔を寄せて、すぐ後ろのに聞こえないよう、こっそりと耳打ちした。


「ねぇ、ハリー。やっぱりあいつ、変な奴だよ」

「え? 誰のこと?」


 しかし辺りの様子にすっかり気を奪われていたハリーは、とロンのやり取りを聞いていなかったらしい。
 ロンはの名前を出そうとしたのだけれど、その前に列の歩みが止まってしまった。
 先頭を歩いていたマクゴナガル先生が振り返ったので、ロンは仕方なく体勢を戻す。

 教員席の前。
 段の下にわらわらと溜まる一年生たちの一団をその場において、マクゴナガル先生はなにやら準備を始めた。

 持って来られたのは椅子とくたびれたとんがり帽子。
 なんともぼろぼろで、一体何十年使えばあんな状態になるんだろうと思えるようなその帽子は、広間にいる全ての視線を一身に集める。
 そうしてたちが凝視する中、その帽子はなにやら不自然にもぞもぞ揺れだしたかと思うと、いきなり大きく裂け目が割れて、そこから少し調子はずれなメロディーが流れ出した。



 グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン。



 以前ハグリッドに教えてもらった寮の名前と説明を、帽子は高々と歌い上げる。


「………魔法界って、なんでもありなのね」


 この分だとそのうち、そこら辺にある蝋燭やら食器やら椅子やらまで口をききだしそうだ。
 しかしのそんな呟きは、今度は誰に聞かれることもなく、帽子は上機嫌のうちにフルコーラスを歌い終えた。

 そしてとうとう組分けの儀式に入る。

 どうやらあの椅子に座って、帽子をかぶればいいらしい。
 どんどんと名前が呼ばれて、みんな次々に所属の寮が決まっていく。
 そこでもやはり、帽子がさも当然とばかりに口をきいていた。

 あのハーマイオニーという子が呼ばれて、ハリーが呼ばれて、ロンが呼ばれて………。


!」


 とうとうの名前が呼ばれ、は壇上へと進み出た。
 前の皆がしたのと同じように、椅子に座って大人しく帽子が降りてくるのを待つ。
 ゆっくりと頭の上にそれが乗せられると、サイズが大きすぎるのか鼻の上あたりまですっぽりとかぶってしまった。


(―――ふむ、ふむふむふむ。ほほ〜う)


 突然聞こえてきた低い声。
 さっきから聞いている帽子の声だ。
 は別段驚きもせず、その声を聞く。


(君は、なかなか面白い子だの)

「………どうも」


 何を根拠にそう言うのかはわからなかったが、マグルの非常識が常識のようなこの世界なのだから、頭の中だか心の中だかぐらいを読んでいてもおかしくない。
 だからといって面白いなどといわれたのは初めてだったは、とりあえず礼を言ってみた。

 なんとなく、帽子がうねうね動いているような感触がする。
 それと同じように、ふーむふーむという唸り声がの耳には届いて。

 それ以上反応を示さない帽子に、ふと思って聞いてみた。


「難しいですか?」

(難しい)


 即答だった。
 やはりふむふむ唸って帽子が言う。


(ポッター家の子といい君といい、今年は難しい子が多いものだ。さて、どこに入れたものか………)


 どうやらハリーのときも随分と悩んだらしい。
 そう言えば、ハリーも帽子をかぶっている時間が長かったな、とは思い出した。

 自分は一体、どの寮になるのだろう。
 帽子が悩んでいる間は何もすることがないので、ぼんやりとそんなことを考えてみる。


 ハリーはグリフィンドール。
 ロンもおなじグリフィンドールだった。
 ハリーと同じ寮ならいいなとなんとなく思うけれども、まあ違うなら違うで別に特に困るというわけでもないからいいかとも思う。
 他はハッフルパフかレイブンクローか。
 スリザリンということはないだろう。だって自分はマグルの出身だから。あの寮は純血主義だと誰かが言っていた。

 ああ、そういえば、全然関係ないけれど、列車の中でハリーに貰って食べたかぼちゃパイはおいしかった。
 他にもかえるチョコとか杖形甘草飴とか。
 あんなにもたくさんのお菓子を食べたのは初めてだ。

 だけどあの百味ビーンズ? あれは一種の賭けだと思う。
 自分がよく確かめもせずに食べたものは、血液味というしろもので。
 リアルな血の味のわりに、鉄分が含まれているわけでもないらしい。せめて鉄分摂取が出来るというなら、納得のしようがあるというものを。
 ロンの話だと、他にももっと珍妙奇天烈な味が入っていると言う。
 魔法使いの考えることというのは、やはり自分たちとはどこかネジの位置が五本分ぐらい違うのかもしれない。


 ………でも自分も魔女だったっけ。


 忘れかけていた衝撃的事実をふと思い出し、は帽子の影で憮然とした。

 なんだかまだ実感がわかないというのが実際のところだ。
 かと言って、ここまできて違いますとか言われても、それはそれで困ったことになるような気もするわけで。
 バイト先はここへ来る前に辞めてしまったし、また新しく探すとなると一苦労なのだ。
 貯金はほとんどないし、それこそ身の回りのもののほとんどをバックに詰めてここまで持ってきたというのに………。

 ところでその荷物は一体どうなっただろう。
 列車を降りるときには運んでおいてくれると言っていたから置いてきたけれど、名札をつけてるわけじゃなし、行方不明になるとちょっと困る。まあ貴重品が入っているわけでもないから別に………あ、でも杖が入って………。


(あー、。すまないが、ちょっと静かにしてはもらえんか)

「はい?」


 徒然に思考をめぐらせていたは、突然聞こえてきた帽子の声にそれを停止させた。
 少しだけ小首を傾げる。


「声に出てましたか」

(いいや。だが、そうも関係のないことばかり後から後から考えられると、上手く考えがまとまらん)

「はあ」

(もう少し静かに考えておくれ)

「わかりました」


 はその帽子の言葉に素直に頷いた。
 が、具体的にどうすればいいのかはわからなかった。

 静かに考えるなど、一体どうすればいいのだろうか。
 別に口にだしていたわけでもないのだから、これ以上静かにすることなどできないように思うのだけれど。

 しかし、こうして考えているとまた邪魔をしてしまうかもしれなかったので、とりあえずは何も考えないことにした。
 これならば、頭の中をのぞく帽子にもうるさいことはないだろう。

 はただ帽子の裏の暗闇を見つめて、頭の上でうごめく帽子の感覚だけを感じる。


「…………」

(……………)

「………………」

(…………………

「はい」


 帽子に呼ばれて、はすぐさま返事をした。
 ようやく決まったのかと思ったが、それにしては帽子の声が重い。


(私はなにも、何も考えるなとは言っておらん。普通にしていればいいのだ)

「はあ………」


 この帽子はどうやら注文が多いらしかった。
 他の人にもそうだったのだろうかとは考える。


(いいや、ここまで難儀なのは君だけだ。まったく、普通人間と言うのは、考えまいとすればするほど考えてしまうものだというのに。今の君では見えてくるはずのものも見えてこん。本当に不思議な子だ。とにかく普通にしていなさい、普通に)


 頭の中の思考に答えられた上に、愚痴のようなものまで聞かされ、あまつさえ普通にしていろと要求されてしまった。

 考えてもダメ、考えなくてもダメ。

 まったく難しいことだと思ったが、は極力帽子の邪魔をしないようにと一応の努力をしてみる。
 するとそのかいあってか、今まで唸るばかりだった帽子が何やら話し出した。


(ふーむ、なるほど。君には、物事を客観的に見ることのできる冷静さが備わっている。そして種類はちと違うが知恵もある。これを見ればレイブンクロー向きだが、その歳にしては多くの苦労を知っていて、そのせいかとても忍耐強い。ちょっとやそっとでは動じない根性も持ち合わせておる)


 まるで性格診断をされているようだったが、それをしているのが帽子とくればなんとも不思議な気分だった。
 けれどその帽子の言い分は、少し自分を買い被っている様な気がする。
 きっと他の人に言わせれば、冷静に見えるのはただ単に無関心なだけで、忍耐強いのは無頓着だからということになるのだろう。

 そうは思ったけれど、ここはとりあえずこの組分け帽子に任せることにした。
 なんと言っても相手は魔法の帽子。
 口をきくうえに人の頭の中まで覗くのだから、きっとそれはそれはすごい帽子………なのだろう、きっと。


(ハッフルパフか………ふーむ。学ぶ意欲がある。才能の発揮を望んでいる。だが………ほほう、恐れもあるのか。なるほど、マグル出身では、まれにだがある事だ。己の中にある不思議の力に対する不安、恐れ。君の場合は普通よりそれが強いようだが、しかしそれにも勝る期待があるな。過去に立ち向かおうとする勇気。それは何よりも尊いものの一つ。ふーむ、そうか、なるほど。それならば…………)




「グリフィンドール!」




 空気を震わせて帽子が叫んだ途端に、広間にわっと歓声があがった。
 隣に立っていたマクゴナガル先生によって帽子が取られ、突然明るくなった視界には目を細める。
 しかしすぐに立ち上がると、ひときわ大きな拍手をあげているオレンジ色のひしめく長机へと近づいていった。


「よかった、! 君も同じ寮だ!」


 を迎えたハリーは、とても嬉しそうに笑って言った。
 向かいの席に座ったも、ほんのわずかにだが微笑む。


「でもすごく長かったね。何かあったの?」

「別に何も………そんなに長かった?」


 確かに自分でも長いなあとは思ったけれど、実際はどれくらいの時間だったのかわからない。
 だからが首を傾げてみせると、ハリーはこっくりと頷いて。


「うん。が一番長かったんじゃないかな。ね、ロン」

「ああ、ハリーよりも長かったよ」


 ハリーだけではなくその隣のロンにまで肯定された。
 そう言えば帽子にも、難儀だとかなんだとか散々言われたような気がする。

 は全ての組分けを終えて片付けられていく帽子をちらりと見やり、わずかに肩をすくめて見せた。


「面白くて不思議で難儀な子供だって言われた」


 後でよくよく考えてみれば、それはずいぶん失礼な話なんじゃないかと思ったのだけれど。

 本人はさして気にしていない上に、その後、何もなかったはずのテーブルの上にものすごいご馳走が忽然と現れたものだから。

 ハリーとロンは、その辺りのことをに尋ね返すことはできなかった。





2006/01/01 up

ヒロインの所属は獅子寮に決定。
組分け帽子に『難儀な子供』と称された、前代未聞の新入生。


――― 勝手にうんちく いちがつついたち ―――

★ 評価は五段階 ★

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