★ シリーズ第6作『ハリーポッターと謎のプリンス』日本語版がついに予約開始! 発売日は2006/5/17の水曜日。
ハリーの恋の行方は?プリンスの正体は?そしてヴォルデモートとの因縁の対決がまたしても……。物語のスリルは加速するばかり! ★







 6 入学式のその前に






 ホグワーツ特急の旅は、がこれまで経験したことのないことでいっぱいだった。

 長い時間列車に揺られ、車内販売ではハリーが魔法界のお菓子をこれでもかというほどに買い占めた。
 ロンの説明を受けながら、ハリーにすすめられるままにカエルチョコや百味ビーンズを口にして。

 色とりどりのビーンズの中から、が無造作に口に入れたどす黒い赤色のそれをみて、ハリーとロンは思わず、あっと息を呑んだ。
 明らかに怪しい色具合のそれ。


、それ、何味………?」

「……………血」


 恐る恐る尋ねられた問いにボツリと返したの答えを聞くや、ハリーとロンは顔色を悪くした。
 実際に食べた本人はまったく変わらぬ顔をしているというのに、二人の方がよほど気分が悪そうだった。

 そうこうしているうちに列車はホグワーツへと到着する。
 制服のローブに着替え、流れに乗ってぞろぞろと下車して。


「イッチ年生! イッチ年生はこっちだ!」


 人の波から頭二つ分以上もはみ出した大きな人影が、巨大なカンテラを振ってことさら小さな一年生たちを集めていた。


「ハグリッド」

「おお、ハリーに! 元気だったか、よう来たな」


 相変わらず山男のようなハグリッドは、もじゃもじゃの髭と髪の向こうからにっこりと微笑む。
 大きな彼の身体は良い目印になったのか、一年生らしき生徒はぞくぞくと集まってきていた。

 一ヶ月ぶりのハグリッドとの再会は慌しく終わり、たちは促されるまま四人乗りのボートへと乗り込んだ。
 一年生を乗せたボートは船団を組み、どこかおどろおどろしい湖面をゆっくりと進んでいく。
 ハグリッドの、頭下げー! という号令と共に巨大な城のそびえ立つ崖下の洞窟へ入ったかと思うと、ボート船団は城の地下と思われる船着き場に停泊した。

 そこからはハグリッドのランプにつれられて、岩の路をぞろぞろと連れ立って登る。
 あたりはすっかり夜の帳が下りていて、しかも木々や草葉が鬱蒼と茂っているものだから、光といえばハグリッドのランプだけ。
 それを見失わないようにしばらく行くと、たちの目の前に巨大な樫の木の扉が現れた。

 ハグリッドはその場に全員がいることを確かめ、おもむろにその樫の扉を叩く。
 そうして出てきたのは、とても厳格で気難しそうな女の人だった。


「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです」

「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」


 マクゴナガル教授は見た目に違わず厳しそうな声音でそう言うと、その場に佇んでいる一年生たちを城の中へと招き入れた。

 ただっ広い玄関ホールの天井はどこまでも高く、床を見てみれば大理石で造られている。
 松明の炎はどこか幻想的で、その雰囲気に新入生たちはせわしなくあたりを見回していた。

 どうやらこれには、マグル出身も魔法使い出身も関係ないらしい。


「ミス・。この中にミス・はいますか?」

「―――はい」


 一体天井の果てはどこだろうと頭上を見上げていたは、突然名前を呼ばれて我に返った。
 けれど呼ばれた理由がわからなくて小首をかしげる。


「どうしたの、

「さあ?」


 心配げにたずねるハリーに応えて、とりあえずマクゴナガル教授の下へと歩み寄った。
 マクゴナガル教授は、前に進み出てきたのことを上から下まで一瞥し、おもむろに口を開く。


「ミス・、あなたはこちらへ。先に行かなければならない所があります」

「あの、だけですか?」


 真っ先に反応したのは当のではなく後ろにいたハリーで。
 マクゴナガル教授はそちらへちらりと視線を向ける。


「ええ、そうですよミスター・ポッター。皆さんは私についてくるように。ミス・は、こちらのスネイプ教授についてお行きなさい」


 マクゴナガル教授がそう言うと、いつの間にそこにいたのか、髪も目もローブも真っ黒な、土気色の顔をした男がのことを見下ろしていた。
 スネイプ教授と呼ばれたその人物は、鋭い目つきでを一瞥したかと思うと尊大にローブを翻す。


「きたまえ」


 やはりスネイプ教授もその外見に違わず、暗く重苦しい声音だった。
 は言われるままにその後ろへついていく。
 途中、自分とは別の方向へ移動する皆の気配に一度だけ振り返ったが、コンパスに差のあるは前を行くスネイプとはぐれないよう、すぐさま前に向き直った。

 なぜだか人気の感じられない城内を、靴音を響かせながら歩いていく。
 廊下に松明は掲げられていたが、前を行くスネイプのもつ雰囲気のせいなのか、どこか怪しい暗さに覆われているような気がした。

 二人は松明に照らされる廊下を渡り、階段を上り、いくつかの扉をくぐって、ただ黙々と城内を歩いていく。
 一体どこまで行くのだろうとが思い始めた頃、ようやく前を歩く教授の足が、一つの部屋の前でその動きを止めた。

 スネイプは後ろにいるを振り返ることもなく、おもむろに目の前の扉をノックする。
 するとどうだろう。
 扉は誰が手を触れた気配もないのに、まるで内から開かれるかのごとく、ひとりでにその口を開けた。


「入りたまえ」


 後ろに突っ立ったままでいるをスネイプ教授は視線だけで見下ろして、尊大な仕草で扉の前の道を開ける。
 そしてが室内に足を踏み入れると、自分も中に入って扉を閉ざした。


「ダンブルドア校長、ミス・を連れて来ました」


 開口一番にそう言って。
 部屋の中央に佇んでいた影に呼びかけた。


「おお、待っておったよ。ご苦労でしたな、セブルス」


 ゆっくりと振り返ったその人は、なんとも立派な白ひげをたくわえたご老人で。
 鼻の上に引っ掛けた半月型の眼鏡の奥でこの上なく優しげな笑みを浮かべた、この人こそ魔法使いといういでたちをした人だった。

 手招きされたは、おとなしくそれにしたがう。
 近くまで来ると、微笑んだままでまじまじと顔をのぞかれた。


「さて、。君はなぜ自分だけがここに呼ばれたか、見当がついておるかね?」


 たずねてくるダンブルドア校長の表情は、どこかいたずらをたくらんでいるような、含みのある笑顔だった。
 は答える。


「学費のことですか」


 他に自分だけが呼び出される理由が浮かばない。
 むしろ、それは一番大切な問題だと思った。
 それに、ハグリッドから手紙を受け取った時に後で校長から話があるだろうと聞いていたので、はさして驚いてはいない。
 すると案の定、ダンブルドア校長はこっくりと一つ頷いて見せた。


「そのとおり。君はなかなかしっかりしとるの。確かに君をここへ呼んだのは、これから君がホグワーツで学ぶために必要な諸々のことについての話をするためじゃ」


 ダンブルドアは言いながらデスクの席へと戻り、にはそばにあった椅子を勧めた。


「大体の話はハグリッドから聞いておる。お前さんは少々………難しい境遇におるようじゃな」


 その表現がどれほどオブラートに包まれているのか。
 にはよくわからなかったけれど、ただ難しいことは何もないと思った。
 お金がないのはいつものことで、むしろ今ここにいることのほうがよほど不自然だ。

 けれどダンブルドアは、どうやらそう思ってはいないらしい。


「お前さんには才能がある。それはここにいる全ての者に言える事じゃ。だからこそ君たちは、このホグワーツで学ばねばならん」


 ダンブルドアは白い髭と眉毛の向こうからを見つめて言う。

 その才能を活かすか殺すかは自分次第だと。
 ただ持て余すのか、使いこなすのか。
 それを選択するのは自分自身なのだと。


「だが君のその才を、みすみす埋もれさせてしまうのはなんとも惜しい。そうじゃな、例えばどこからか援助を………離れて暮らすご両親に、援助を求めることはどうしてもできんかの」

「………………」


 はわずかに俯いて、視線をダンブルドアから逸らした。

 両親に学費の援助を頼めないのか。
 至極もっともで、当たり前の提案。
 けれどには、頷くことができない。


「…………両親とは、もうずいぶん長い間連絡を取っていません。ここに来ることも、話していません」


 こんなことを言える立場ではないことはわかっていた。
 学ぶ機会を与えられて、ハグリッドにも世話になって、それでもこうして俯くしかできない自分は、なんてわがままなんだろう。
 けれどこればかりは、いい返事を返せそうにない。


、君はこのホグワーツで学びたいと思うかね」


 けれどダンブルドアの声は、驚くほど穏やかなものだった。
 だからは俯けていた顔を上げる。
 するとそこにあったのは、優しげな微笑みをたたえたおじいちゃんで。


「君が君自身の意思でそう望むのなら、ここには君を受け入れる準備がある。ホグワーツは意欲のあるものを拒むことはせん」


 どうかね? とたずねられて、は再び視線を落とした。
 考えるように沈黙して。


「…………わかりません。魔法とか、学校とか、今までそんなこと、考えてもみなかったので………」


 在学はしているものの、学校にまともに通った記憶はあまりない。
 始めの頃は担任の先生も、両親がいる家のほうに何度も訪れていたようだったけれど、最近ではそんな気配もとんとなくなった。
 ある程度の読み書き算数は問題なくできるし、生きるための術というならば、学校へ行かなくても大人たちに混じって仕事をしていれば、いくらでも学ぶことができる。
 だからは今までこれといって、学校に執着や関心を持った覚えはなかったのだけれど。

 は顔をあげ、真っ直ぐにダンブルドア校長の目を見つめた。
 そして言う。


「―――でも、もし本当に私に魔法の才能があるというなら、使いこなせる術があるのだとしたら……私はそれを、学びたい」


 少しも揺らぐことなく向けられる瞳には、落ち着いた色の中に強い意志の光がともっていた。

 を知る者がこの場にいれば、きっと驚いたに違いない。
 この子がこんな目をするなどと、思いもしていないだろうから。

 いつものは歳相応とは到底思えない表情の乏しさで、達観しているように冷めた目で物事を見つめる。
 一体誰が言ったのか、無関心、無頓着、無表情などと、いつからかそう囁かれるようになって。

 彼女はまだ、十一歳を迎えたばかりの子供なのに。

 の瞳を受け止めたダンブルドアは、ふと相好を崩した。
 そうして言う。


「ホグワーツでは、助けを求める者には必ずそれが与えられる。よかろうミス・。君の入学を改めて許可しよう。なに、足りない教材については心配することはない。先生方にはもう話を通してあるでな。皆こころよく貸してくださるじゃろう」


 それまでの若干張り詰めたような雰囲気はがらりとその様を変え、ダンブルドアはよっこらしょという掛け声と共に椅子から立ち上がった。
 その豹変振りにはわずかに目を瞬く。


「さあ、もうすぐ大広間で新入生の組み分けと歓迎会が始まる。わしもそろそろ席に着かねば、遅刻してはマクゴナガル先生に怒られてしまうでな」


 ダンブルドアはいたずらっ子のようにウィンクをして、を戸口のほうへと促した。
 ずっと黙ったまま扉の脇に佇んでいたスネイプ教授が、変わらぬ仏頂面でその様を見やる。


「スネイプ教授、彼女を皆のところにまで頼めますかな」


 話が済むまでずっとそこにいたのだから、初めからそういう手筈になっていたのだろうとは思うのに、ダンブルドアはわざわざスネイプにそう言った。
 するとスネイプは、少々慇懃とも取れる仕草で軽く腰を折ることで了承の意を示す。


「君たちの組み分けを楽しみにしとるよ」


 とスネイプが外に出て部屋の扉を閉める前に、ダンブルドアはそう言って柔和な笑みをに向けた。





2005/12/10 up

ダンブルドアは面白いおじいちゃんのような印象があります。
そして陰険の権化のようなオーラを放つスネイプ先生にも動じないヒロイン。


――― 勝手にうんちく じゅうにがつとおか ―――

★ 評価は五段階 ★

New!ハリーポッターと混血のプリンス 日本語版  ★★★★★
     待ちに待ったハリー・ポッターシリーズの第六作目の日本語版!
     ついに発売日決定です!(ドンドンパフー)
     原書に挑戦されている方も多々いらっしゃるようで、Web上では
     六巻の話題がまことしやかに交わされておりました。
     英語の出来ない人間にはまさに生き地獄!(←大袈裟)
     ああ、ですがしかし!
     ついにきたのですよ、皆さん! 来るべき日が!(笑)
     ここでは多くは語れません。
     ていうか、語る必要もないでしょう。(そしてネタもない)
     発売日は来年5月17日の水曜日。
     確実に手に入れたい方は、予約をお勧めします。はい。


ハリー・ポッターと賢者の石 携帯版(B6サイズ)  ★★★★★
     みなさまご存知の『ハリー・ポッターと賢者の石』。
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     今さらと思われるかもしれないですがこの携帯版は、これから買おうと思っている人、
     読み始めようか迷っている人、外でもハリポタ読みたいよう! という人にはぜひお勧めしたいです。
     内容はハードカバーの本とまったく変わりませんが、サイズが随分とコンパクトなんです。
     一度読み始めると止まらない面白さのハリポタ。
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     仕事場へも学校へも、旅先へも自由自在。

     「すごい人気だけど、まだ読んでないんだよねぇ」
     「ちょっと高いしなぁ……。どうしようかなぁ」

     という人にはお勧めしたい一品です。

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     こちらの携帯版は、社会の喧騒に疲れた時の現実逃避に………。
     それぞれ使い分けてみるのもいいかもしれません。
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