★ シリーズ第6作『ハリーポッターと謎のプリンス』日本語版ついに発売!!
          とうとう六年生になったハリー。恋の行方は? プリンスの正体は? ハリーたちのたどり着く先を見届けるのはあなた! ★







 19 サプライズは突然に






 楽しいことの前と後には、必ず苦難が待っている。

 それは、魔法を教えるという、このなんともファンタジックな学校ホグワーツでさえも例外ではなかった。


 とうとう、クリスマス休暇を明日に控えた日の午後。


「―――ハリー、ロン!」


 昼食を終え、食堂からの帰り道。
 廊下を歩いていたハリーとロンの二人は、呼び止められて振り返った。


「ハーマイオニー」


 その姿を見止めて、ハリーが意外そうに呟く。
 一緒に昼食を食べていた彼女が、明日の準備があるからと言ってと共に先に寮へ帰っていったのは、少し前のことだったからだ。

 明日からホグワーツは、待ちに待った冬休みに突入する。


「どうしたんだよ、そんなに慌てて。帰り支度はもう済んだのかい?」


 駆け寄ってきたハーマイオニーを見下ろして、ロンが尋ねた。
 ハリーもロンも居残り組みだが、他のみんながいそいそと仕度に取りかかっているのを知っている。今日の午前までが授業だったから、みんなこれから勉強道具を片付け始めるのだ。
 勤勉なハーマイオニーのことだから、教科書類は全部持って帰るに違いない。
 だからこそ、こんなにも早く仕度が終わるとも思えないのだけれど。

 するとハーマイオニーは、若干慌てた様子でまだだと答えた。


「後はもう、残った教科書を入れるだけだからそれはいいんだけど………それより二人とも、のこと見なかった?」

?」

「君と一緒に寮へ帰ったじゃないか。それからは見てないよ」


 ハリーとロンは顔を見合わせて言う。
 ハーマイオニーはそれを聞くと、そう、と溜め息を漏らした。


、いなくなったの?」

「ええ、そうなのよ。しばらく荷造りを手伝ってくれてたんだけど、用があるからって言って出て行ったきり、戻ってこなくて」


 そわそわと落ち着きのない様子で、辺りに視線をめぐらせるハーマイオニー。がどこかふらふら歩いてやしないかと探しているのだろう。
 そんな彼女を見て、ロンは肩をすくめる。


が突然いなくなるなんていつものことじゃないか。そんなに心配しなくても………」

「またどこかで生き倒れてるかもしれないでしょ!? 今日は寒いのよ、雪が降ってるのよ! あの子なら遭難し放題だわ!」


 楽観的な発言をこぼしたロンに、ハーマイオニーは目をむいて叫んだ。
 の前科を知らないわけではあるまいにと責めている。


「…………なるほど」


 隣でハリーが重々しく頷いた。
 十分にありえることだった。

 そう思い至った途端、ハリーの中で不安がむくむくと頭をもたげだす。
 なら何があっても(何をしても)おかしくはないと、なぜかそんな確信が生まれて。

 雪の降りしきる、誰も通らないような薄暗い抜け道で、ひとり倒れ伏したままぴくりとも動かない哀れなの姿がハリーの脳裏をかすめた。


 まずい。


 ハリーは急に湧き上がった不安に急かされ、真剣な面持ちでハーマイオニーに向き直った。


「僕、中庭の方を探してみるよ。ロンは温室を見てきて。ハーマイオニーは図書館を」

「え、探しに行くの?」


 親友の口から飛び出した言葉に目をぱちくりさせるロン。
 なにやら物思いにふけりだしたと思っていたら次の瞬間にはもう、ハリーの瞳はハーマイオニーと同じそれで。


「当たり前じゃない、手遅れになったらどうするのよ!」


 のん気に驚くロンを、ハーマイオニーがにらみつけた。

 たかだか数十分の失踪で大袈裟な、というのがロンの考えなのだ。
 しかし口には出さなかった。
 寮から駆け戻ってきたハーマイオニーも、話を聞いて探しに行くと言い出したハリーも、至極真剣だったので。
 これ以上なにか言えば、二人の不安と苛立ちが理不尽にも自分の方へとその矛先を転換しそうだった。

 この場合、一体どちらが正しいのか。
 決して、ロンのに対する友情が薄いというわけではあるまい。


「急ごう。のことだから、またどこか厄介な抜け道にでも入り込んで―――」

なら、ネビルと一緒にスネイプの地下牢に行ったよ」


 さらりと。

 たまたま三人のそばを通りかかって、その話の内容を察したらしいディーンがそう助言した。
 息巻いていたハリーとハーマイオニーは目をぱちくりさせる。


「地下牢? ネビルと?」

「どうしてそんなところに今さら………」


 魔法薬学の授業は昨日で最後だったはずだ。

 まるで嫌がらせのように、休暇前で浮かれている頃合を見計らって行われたテストの筆記用答案が返却された。
 スネイプに嫌われているとはいえ、筆記においては群を抜いて優秀なハーマイオニーはもちろん、ハリーもロンもなんとかそれなりの点数を収めていたのだけれど。


「さあ? こんな時期に呼び出されてるのって、この前のテストで赤点だった連中だけだけど」


 ディーンは小首をかしげてそう口にする。
 ネビルが地下牢に行ったというのは、十中八九その理由からだろう。
 どこにも疑問の余地はない。

 では、は?


「…………………まぁさかねぇ!」

に限って、そんなこと!」

「あるわけないわよねぇ!」


 あはははは、と、三人は顔を見合わせて笑う。
 よくわからないが、そばにいたディーンもつられて笑った。

 入学以来、実技においてその才能をいかんなく発揮しているに限って、まさか呼び出しを食らっているなんてそんなこと。
 ネビルが首席になったと言われる以上にありえないことだ。
 ハリーたち三人は、なおもあははと笑い続けていたが。


「―――で、結局だれか、の点数見たの?」

「…………………」


 ディーンのその問いに、答えられる人間はいなかった。











           *











 はっきり言って不愉快だった。
 確かに、クリスマス休暇を前にしてそわそわと落ち着きなく浮かれまくっている生徒どもにテストを行ったのは自分である。

 だがしかし、実技、筆記ともにあわせて、それほど無理難題を提示した覚えはない。もちろん、おいそれと点数を取れるような、そんな甘ったるい問題を出しはしなかったが。
 それでも、曲がりなりにも我が輩の高等な授業を受けている生徒ならば、十分に点数を取れてしかるべき程度の難易度だった。
 だというのに、赤点を取る生徒がいるとはどういうことなのか。

 理由は一つ。

 連中が落ちこぼれなのだ。


 スネイプはその眉間に、マリアナ海溝よりも深い皺を刻みつけていた。
 石造りの廊下を叩く靴音が、彼の苛立ちをいかんなく示している。

 なぜ我が輩が、落ちこぼれどもの面倒を見なくてはならないのか。
 落ちこぼれるということは即ち、連中に我が輩の授業を受ける資格がないということではないのか。

 しかしスネイプには、そう言って彼らを切り捨ててしまうことは出来なかった。
 優しさからでは、もちろんない。
 教職についているがゆえの義務なのである。

 だからいまスネイプは、甚だ、甚だ、不本意ではあるが、クリスマス休暇を明日に控えた今、いつも授業を行っている地下牢の教室へと足を進めているのだった。


 靴音も高く階段を下り、重厚な木戸を勢い良く押し開ける。
 既に席について待っていた落ちこぼれの生徒たちを一瞥もせずに、黒いマントをはためかせ、いつもの定位置である黒板の前に立った。

 ばさりとローブの裾をさばいて身を翻す。


 そして。




「…………なぜお前がここにいる」




 萎縮している生徒たちの中に平然と紛れているその姿を確認して、スネイプは開口一番にそう呟いた。


「…………?」


 ひたと見据えられたは小首を傾げてみせる。

 スネイプの登場に大なり小なり身を竦ませている落ちこぼれの群れの中で、ふてぶてしいほどに落ち着き払ったその態度。
 いつもいつもいつも、それと同じ顔をして、よどみなく薬を調合してのけるのだ。
 あのでしゃばりのハーマイオニー・グレンジャーとはまた違った、忌々しいほどの優秀さ。

 その隣にいたネビルなどは、自分のことではないのに今にも卒倒しそうな顔色でとスネイプを交互に見やっている。


「スネイプ先生が、赤点取得者を呼び出されたので」

「我が輩が聞いているのはそんなことではない」


 さらっと言ったの返答を、スネイプは間髪おかずに切り捨てた。

 ここに集まった者たちは、先のテストで十分な点数を取れなかった落ちこぼれたちだ。
 彼らを呼び出したのは自分。そんなことは端からわかりきっている。

 スネイプは増幅する苛立ちを淀んだ瞳にみなぎらせ、を威圧感たっぷりに見下ろした。眉間の皺が、先程より三割増しほどになっている。
 その迫力に、呼び出しを受けた他の生徒たちは思わずすくみ上がった。
 ネビルなどは今にも泣き出しそうだ。


「我が輩が問うているのは、なぜお前が………」


 溢れ出しそうになる何かを押し込めるように一度口を閉ざすスネイプ。
 その顔はまるで苦行にでも耐えているかのようで、これでもかというほどの渋面を浮かべて、ようやく言葉をひねり出す。
 それこそ、苦虫をかみ締めるように。


「……同じ時期に行った実技試験で唯一―――唯一、満点……を、取ったはずのお前が。一体なぜ、どういうわけでここにいるのかということだ!」

「はあ………」


 スネイプの口から飛び出した『満点』という言葉に、その場にいた他の生徒たちがざわめいた。
 ネビルは 「、君、実技満点だったの!?」 と、これ以上ないくらいに目を丸くしている。
 しかし本人は、わかっているのかどうか判断のつかない反応を返すだけだ。

 みんなが驚くのも当然だった。
 スネイプの魔法薬学は難しく厳しいことで有名だ。
 ましてや彼がグリフィンドールを目の仇にしていると言うのは周知の事実で。
 そのスネイプが、実技試験で生徒に満点を与えた。しかもそれがグリフィンドール生とくれば、誰が驚かずにいられるだろう。

 だがしかし、今回呼び出されたのは、その後に行われた筆記試験で赤点を取った生徒たちなのだ。
 それなのになぜ、奇跡の満点取得者が一緒に混じっているのか。

 その場にいた全員が、スネイプと同じ、もっともな疑問を抱いたのだけれど。


「テストの点数が悪かったので」


 その答えは単純明快、実に簡潔なものだった。
 全員がぽかんと口を開ける。
 言葉もない。

 実技試験で驚異の満点を収めた人間が、筆記試験で赤点をとった―――?


「―――っなぜだ!? なぜ調合はできるのにあの問題が解けんのだ! いや、むしろあの問題が解けぬ人間がなぜ調合はできる!?」


 スネイプの血を吐くような絶叫は、暗く陰気な地下牢にわんわんと響き渡った。
 己のことではないのに身を竦めるほかの生徒たち。
 しかし、当のはやはり平然としたもので。


「………なぜでしょう」


 などと、悠長に首をかしげている。
 自分が取った点数のことなど、まったく意に介していないに違いない。


「あえて言うなら………カン、のようなものかと」

「勘で調合ができてたまるか!」


 それはスネイプにとって、実に十何年ぶりかという切実な叫びだった。





 結局その日、はそのままいつもの通り、いつものように魔法薬学の授業を受け、最後に簡単な筆記テストを提出し、他の赤点取得者と同じように平然と自分の寮へ帰っていった。
 そして彼女の意外な欠点はその日の内に、瞬く間にホグワーツ中へ広まったのだという。



 たちが入学して早三ヶ月と少し。


 衝撃の新事実だった。







2006/05/17 up

新事実発覚。
そしてハリーも実は隠れ過保護。
ロンが一番常識人かもしれません。
我が家のロンは苦労性。


――― 勝手にうんちく ごがつじゅうなな ―――

★ 評価は五段階 ★

New!ハリーポッターと謎のプリンス 日本語版  ★★★★★
     待ちに待ったハリー・ポッターシリーズの第六作目の日本語版!
     ついに発売です!(ドンドンパフー)
     原書に挑戦されている方も多々いらっしゃるようで、Web上では
     六巻の話題がまことしやかに交わされておりました。
     英語の出来ない人間にはまさに生き地獄!(←大袈裟)
     ああ、ですがしかし!
     ついにきたのですよ、皆さん! 来るべき日が!(笑)
     ここでは多くは語れません。
     ていうか、語る必要もないでしょう。(そしてネタもない)
     書店で入手できなかった方も、ここからハリーへの道が開けます!


New!DVD ハリー・ポッターと炎のゴブレット 特別版  ★★★★☆
     ハリポタ映画の第四弾、『炎のゴブレット』です。
     映画館で観られた方も多いのではないでしょうか?
     もしかしたら、

     「いいえ、私は映画のあのダイジェスト版のような展開の速さが許せなくってよッ! ええ、許すものですか!」

     …………と、いうような、どこぞの私の友人のごとく、原作派な方もいらっしゃるかもしれませんね。
     確かに映画の方は時間の制限もあり、多くの部分がズッパリバッサリ切り捨てられています。
     ああ、特にシリウスのあの扱いは………。
     いえ、確かに、今回彼はそれほど重要ではないのですが、それでも、ねぇ?
     などと愚痴っている場合ではありません。
     かくいう私はしっかり映画館で観てきました。 本当は吹き替え版が観たかったんですけど、
     あいにくその日の吹き替え版のチケットは完売で……。
     普段はあまり見ない、字幕で観賞です。
     見所は、相変わらず迫力満点のアクションシーンももちろんですが、やっぱり一番の管理人的オススメは
     エマ・ワトソン演じるハーマイオニーのドレスアップ姿!
     これに限りますとも!
     もう、すっごいきれい。とってもきれい。溜め息出るほどきれい。
     正直なところ、今回初登場となるチョウ・チャンは、ビジュアル的にちょっと期待はずれ。
     ハリーの気を一瞬で惹きつけるにしては、どうも色気が足りないような気がします。
     そこをいくと、ハーマイオニーの成長ぶりにはもう仰天もの。 淡い色の美しいドレスが、
     彼女の魅力を十分に引き出してくれています。アップにした髪も素敵。
     もうほんと、『グッジョブ、スタイリストさん!』って感じですね。

     内容に関しては賛否両論で、原作を読んでない人にはわかりにくい部分も多々見受けられます。
     私も原作の炎のゴブレットはまだ読んでいないのでよくわかるのですが、
     細かい設定や状況などの説明が一切はぶかれているんです。
     なので最初は 「ん?」 と思うことが多いのですが、しかし話が進むにつれ、
     その今までに増した本格的なアクションシーンとちょっぴり大人な展開に
     意識はぐんぐん話の中へと引き込まれていきます。

     ハリー・ポッターをまったく知らないという人にはお勧めしませんが、
     少なくとも三作まで知っている方なら大丈夫なんじゃないかと思います。
     ということで、星の評価は四つ。

     あっ! そうそう、大事なことを忘れるところでした。
     炎のゴブレットの見所をもう一つ。
     あの陰険で陰湿でちょっぴり根暗そうなスネイプ先生。
     そんな彼の印象が、がらりと変わる一瞬があるのです!
     あれにはもう、笑いをこらえるのがたいへん。
     ここであまり詳しく言うのは避けますが、スネイプ先生好きにはたまりませんね!
     最高です、先生。(笑)


New!ハリー・ポッターと賢者の石 携帯版(B6サイズ)  ★★★★★
     みなさまご存知の『ハリー・ポッターと賢者の石』。
     あのミリオンセラー作品の第一作目です。
     今さらと思われるかもしれないですがこの携帯版は、これから買おうと思っている人、
     読み始めようか迷っている人、外でもハリポタ読みたいよう! という人にはぜひお勧めしたいです。
     内容はハードカバーの本とまったく変わりませんが、サイズが随分とコンパクトなんです。
     一度読み始めると止まらない面白さのハリポタ。
     しかし、通勤や通学の途中にバスや電車の中であのハードカバーの本を開くのは一苦労です。
     ていうかむしろ無謀。
     腕がぷるぷるします。 経験済みです、はい。
     そんなときに見つけたのがこの携帯版。
     文庫本の豪華版だと思ってください。
     サイズはB6で、表紙も新しくなっています。
     もちろんハードカバーの表紙の絵は、中にカラーページとして収録されていますのでご安心を。
     内容はハードカバーとまったく変わらず、コンパクトなサイズとなってあなたの外出先にお供してくれるのです。
     仕事場へも学校へも、旅先へも自由自在。

     「すごい人気だけど、まだ読んでないんだよねぇ」
     「ちょっと高いしなぁ……。どうしようかなぁ」

     という人にはお勧めしたい一品です。

     もうすでにハードカバーをお持ちの方も、そちらは家でまったりティータイムに。
     こちらの携帯版は、社会の喧騒に疲れた時の現実逃避に………。
     それぞれ使い分けてみるのもいいかもしれません。
     ハード・カバーは保存版に最適ですからねぇ。
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