★ シリーズ第6作『ハリーポッターと謎のプリンス』日本語版の発売日迫る! 2006/5/17の水曜日が運命の日。
          とうとう六年生になったハリー。恋の行方は? プリンスの正体は? ハリーたちのたどり着く先を見届けるのはあなた! ★







 14 友達






 戦い済んで、夜が明けて。


 ハロウィンのトロール騒動でひとり怪我を負ってしまったは、次の日の朝早くに戻ってきた。
 例のごとく傷はきれいさっぱり消え、痛みもほとんどない。
 本当に魔法とは便利なものだとは思うけれども、医務室で飲まされたあの深緑色の奇妙な液体だけは、もう二度とお世話になりたくないと切実に思った。
 それはもう言語を絶する不味さで、苦いやら苦くないやら、渋いやら渋くないやら、とにかくしばらくは水を飲んでも何を食べても、その人外魔境な風味が口の中に残って、何もわからないというありさま。

 初めての飛行訓練で骨折したときには黄土色のドロリとした物体を飲まされたが、今回の薬もそれに迫る衝撃だった。
 良薬は口に苦しとはよく言ったものだが、一晩で直してくれなくていいから、もう少し人間の味覚にあったものを作っていただきたいと思う今日この頃である。

 はまだ口の中に残る微妙な苦味を感じながら、ひっそりと静まり返った早朝のホグワーツを歩き、寝巻き姿の太ったレディを起こしてグリフィンドールの隠し扉をくぐった。


「あなたはいつも変な時間に帰ってくるのね。まだみんな寝ているんじゃないかしら」


 レディはあくび混じりにを迎え入れる。
 もおそらく誰も起きていないだろうことは承知していた。
 むしろそれを狙っていると言ってもいいかもしれない。
 そうすればきっと朝の喧騒に紛れて、皆いつ自分が戻ったのかなんて気にもとめないだろうと。
 変に目立ってしまうのはの本意ではないのだ。

 しかし。


「―――ッ!!」

「う、わ!」


 隠し扉を潜りグリフィンドールの談話室に足を踏み入れたはその途端、突然前から突撃してきた何かに勢い良く抱きつかれて、危うく潜ったばかりの扉に後頭部を強打しそうになった。
 訳がわからずうろたえる暇もなく、頭をしっかりがっちりホールドされる。
 苦しい息の下から何とか頭上を見上げると、ふわふわの栗色の長い髪が見えた。


「ハーマイオニー?」


 その人物を確認して、が声をあげる。
 胸に顔を押し付けられているせいで、もごもごとしか聞こえないかとも思ったが、どうやら抱きすくめている方は聞こえたらしい。
 ハーマイオニーはから身体を離したかと思うと、今度は両肩をがっしとつかんで。


「大丈夫!? 傷の具合は!? 痕なんて残ってないでしょうね!」


 まくし立てるその形相には鬼気迫るものがあった。
 それに若干目を見開きながら、がハーマイオニーの向こうに見えるハリーとロンに視線を向けてみれば、二人は苦笑を浮かべて肩をすくめて。


「昨日の夜からずっとこうなんだよ。マダム・ポンフリーに任せておけば心配ないって僕たちがどんなに言っても聞く耳もたなくてさ」


 ロンの呆れたようなその口ぶりを耳にしたハーマイオニーはキッと背後を振り返り、たった今口を開いたロンに鋭い視線を当てた。
 を開放し、今度はロンへと詰め寄っていく。


は私の為に怪我をしたのよ。心配するのが当然じゃない」


 身長差などものともせず、ロンを睨み上げるハーマイオニー。
 そうされたロンは一瞬たじろいだものの、すぐさま持ち直してハーマイオニーを睨み返した。


「君の場合はいきすぎなんだよ。何度も何度も同じことばっかり。付き合わされるこっちの身にもなってほしいね」

「誰も付き合ってくれなんて言った覚えはないわ」

「そんなこと言って、パーティーの間中ずっと泣きそうな顔してたのは誰なのさ」


 ぎゃんぎゃんと、二人の言葉の応酬は続く。
 すっかり置いてけぼりをくったはその様子を呆然と眺めるしかない。
 結局、最初のハーマイオニーの問いかけにも答える機会を逸してしまったようだ。

 同じく蚊帳の外になってしまったハリーは苦笑を浮かべてに話し掛けた。


「思ったより早く帰ってきて安心したよ。朝になっても戻ってこなかったら、お見舞いに行こうって話してたんだ」

「そんなに大した傷じゃなかったのに」

「でも血が出てただろ?」


 ハリーはそう言って首を傾げる。
 以前、飛行術の授業で骨折したときのほうがの表情は辛そうだったのだけれど、それでも出血を目の当たりにしてしまうとどうしても重症なように思えてしまうのだ。
 元々はあまり表情に出さないし。

 けれどはどこか不思議そうな顔をしながら、もう平気だと言った。


「相変わらずなのね」


 言いあいを続けるロンとハーマイオニーを見ながらが言う。
 ハリーも同じように二人の様子を眺めて頷いた。


「でも、これでもずっと仲良くなったんだよ、あの二人」

「そうなの?」

「うん。口じゃああ言ってるけど、ロンも一晩中のこと心配してたんだ」


 もちろん僕も、とハリーは笑う。
 一見、ロンとハーマイオニーの仲は昨日までとなんら変わらず最悪なように見えるけれども、どうやらそうではないらしい。
 よくよく考えてみれば、二人の仲にあからさまな亀裂が生じて以来、どちらも口を利こうとさえしていなかったものを、今ではこうして激しい口論を繰り広げられるまでになっているということは、明らかな進歩だった。

 ハーマイオニーのつんけんした雰囲気も、ずいぶん薄れているように思える。
 対するロンの彼女を見る目も、以前のそれとはまた違っているようで。

 は二人の様子を眺めながら、ポツリと呟いた。


「………どうして、そんなに心配してくれるの?」


 ハリーはきょとんとしての横顔を見やる。
 ロンやハーマイオニーを見つめているの深い色の瞳は、どこか遠いところを見ている様だった。
 まるで自分だけが、この場所から隔絶でもされているかのように。

 けれどハリーはそんなの顔を覗き込んで。


「だって僕たち、友達だろ?」


 にっこりと微笑んでみせる。
 するとは、僅かに驚いた顔をして。


「…………友達、は、心配するもの?」


 本当に不思議そうに首を傾げたので、ハリーは面食らってしまった。
 友達は心配するものなのか。
 そう真剣にたずねられて。
 一瞬、どう答えていいかわからなくなる。

 自分も本当の友達を持ったのはつい最近のこと。
 けれど周囲の人間やテレビや本などを見て、友達に対するイメージというものはある。


「う、うん。そうだと思う、よ? たぶん………」

「そう」


 後ろ頭を掻きながら、難しい質問の答えを何とか口にしたけれど、はそう言ったきり黙り込んでしまった。
 再びロンとハーマイオニーのほうに視線を向ける。

 ハリーは、どうしてもっとはっきり答えられなかったのかと自分を責めた。
 自信がなくてもそうだと言い切ってしまえば、少なくとも今よりは説得力があったものを。
 があまりに真っ直ぐにこちらを見つめるものだから、思わず気弱になってしまったのだ。

 に気づかれないよう、ハリーはそっと溜め息を落とす。


「私は」

「え?」


 不意に呟かれた言葉に、ハリーはを振り返った。
 あいかわらず前を見たままの
 その横顔を見つめて。


「私は、友達とかってよくわからない………。ずっと一人だったし、学校にもろくに行かなかった。だから………」


 むしろ、誰かと生活を共にすることすら初めてのようなもので。
 夜眠るときに他の誰かの気配があることに、今でもまだ慣れていない。

 大人数で取る食事も、クラスメイトと受ける授業も、こうして誰かに心配されることも。
 みんなみんな初めてのことで、正直どうしていいかわからなくなる時がある。

 ここはとてもにぎやかで、暖かくて、明るい。

 は少しも表情を変えることはなく、いつもと同じ様子でただそこに立っているだけだ。


「僕もだ」


 突然ハリーがそう口を開く。
 今度はがゆっくりとそちらへ視線を向けて。


「僕も、ホグワーツに来ることになってたちに会うまで、友達なんていなかった。学校へは行ってたけど、いとこのダドリーは仲間と一緒に僕をいじめてばかりだったよ。………でも」


 そう言ってハリーは笑う。
 明るい緑の瞳が、眼鏡の向こうできらきらと輝いて。


「君やロンやハーマイオニーが怪我をしたりしたら、やっぱり心配だよ。なにかしてあげたいって思う。それはきっと、自然なことなんだ」


 くしゃくしゃの黒髪に稲妻型の傷が見え隠れする。
 けれど、痛々しいはずのそんなものなど少しも感じさせずに、ハリーの瞳は強く真っ直ぐな光を灯していた。
 そしてそれは、に微笑みかけている。


「あ、でも、には迷惑かもしれな………」

「そんなことない」


 苦笑を浮かべたハリーに、思わず口をついて出た言葉。
 自身ですら予期しなかったその行動に、ハリーもきょとんとして。

 はすっと視線を逸らすと、再び前に向き直る。
 勢いの衰えぬロンとハーマイオニーの攻防。
 それをいつもと同じ、無表情な視線で見やり、そして。


「ありがとう」


 そう呟いたの横顔が、ハリーにはうっすらと微笑みを浮かべているように見えた。






2006/03/05 up

ようやく仲良くなりました。
なんだかんだで皆良い子なんです。


――― 勝手にうんちく さんがついつか ―――

★ 評価は五段階 ★

ハリーポッターと謎のプリンス 日本語版  ★★★★★
     待ちに待ったハリー・ポッターシリーズの第六作目の日本語版!
     ついに発売日決定です!(ドンドンパフー)
     原書に挑戦されている方も多々いらっしゃるようで、Web上では
     六巻の話題がまことしやかに交わされておりました。
     英語の出来ない人間にはまさに生き地獄!(←大袈裟)
     ああ、ですがしかし!
     ついにきたのですよ、皆さん! 来るべき日が!(笑)
     ここでは多くは語れません。
     ていうか、語る必要もないでしょう。(そしてネタもない)
     発売日は2006年5月17日の水曜日。
     確実に手に入れたい方は、予約をお勧めします。はい。


New!ハリー・ポッターと賢者の石 携帯版(B6サイズ)  ★★★★★
     みなさまご存知の『ハリー・ポッターと賢者の石』。
     あのミリオンセラー作品の第一作目です。
     今さらと思われるかもしれないですがこの携帯版は、これから買おうと思っている人、
     読み始めようか迷っている人、外でもハリポタ読みたいよう! という人にはぜひお勧めしたいです。
     内容はハードカバーの本とまったく変わりませんが、サイズが随分とコンパクトなんです。
     一度読み始めると止まらない面白さのハリポタ。
     しかし、通勤や通学の途中にバスや電車の中であのハードカバーの本を開くのは一苦労です。
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     腕がぷるぷるします。 経験済みです、はい。
     そんなときに見つけたのがこの携帯版。
     文庫本の豪華版だと思ってください。
     サイズはB6で、表紙も新しくなっています。
     もちろんハードカバーの表紙の絵は、中にカラーページとして収録されていますのでご安心を。
     内容はハードカバーとまったく変わらず、コンパクトなサイズとなってあなたの外出先にお供してくれるのです。
     仕事場へも学校へも、旅先へも自由自在。

     「すごい人気だけど、まだ読んでないんだよねぇ」
     「ちょっと高いしなぁ……。どうしようかなぁ」

     という人にはお勧めしたい一品です。

     もうすでにハードカバーをお持ちの方も、そちらは家でまったりティータイムに。
     こちらの携帯版は、社会の喧騒に疲れた時の現実逃避に………。
     それぞれ使い分けてみるのもいいかもしれません。
     ハード・カバーは保存版に最適ですからねぇ。
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