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12 ハロウィン騒動
どうやら自分は、なんだかんだで色んなことが出来るらしいと。
リディアがようやくそう自覚したのは十月も終わりに差し掛かる、ハロウィンを目前に控えた頃だった。
飛行訓練の授業で怪我をしたあの一件以来、同室のハーマイオニーと少し話すようになった。
正確にはあの後の夜の脱走事件がきっかけなのかもしれないが、ハーマイオニーはそのことをあまり話したがらなかったし、どうやらロンやハリーとは険悪な仲になってしまったらしい。
しかしまあ、別にいつも一緒にいるほど仲良くなったというわけでもなかったので、リディアも三人の関係については特に気にしていなかった。
人間、誰にでも好き嫌いがある。
ハリーとは今までどおりに話をするし、その流れでロンとも言葉を交わすこともあって、それでいいと思っていた。
しかし、転機はあるハロウィンの日に突然訪れる。
始まりのきっかけは、その日の午前中の授業。
妖精の呪文の授業を受け持つフリットウィック先生が、そろそろ物を飛ばす練習をしましょうと言ったことから始まる。
「さあ、いいですか皆さん。いままで練習してきたことを思い出して。手首はしなやかに、呪文は正確に。ビューン、ヒョイ、ですからね」
一人ひとりに配られたのは白く軽い一本の羽。息を吹きかければそれだけで飛んでいきそうだ。
しかしグリフィンドールのイッチ年生たちは真剣な瞳でそれを見つめ、杖を持つ手には緊張が走っていた。
「ああ、そうそう、ミス・グロスカ。あなたは十分に注意して。やりすぎてはいけませんよ。いいですね。今日飛ばすのはその羽です。決して以前のように机や先生を浮かせたりしないように」
「はあ」
フリットウィック先生は若干おびえたような口調で、リディアに向かい釘を刺した。
実はリディアには前科がある。
まだ授業が始まったばかりの頃、最初に手の動きを練習して、次に呪文を教えられたときだった。
ただ模擬的に、その二つを組み合わせてちゃんと出来ているか、一人ひとりテストしてみましょうと先生が言ったので、リディアも順番が来るのを待って杖を振った。
別に何かを浮かせようとしていたわけではない。
そんな指示は受けていなかったし、ただフォームを確認するためだけのものだったのだ。
しかし。
リディアが何気なく杖を振ったとき、正面でその動きを確認していたフリットウィック先生とその机が、ふわりと地上十センチほどに浮き上がってしまったのだ。
もう教室中は大騒ぎである。
驚いた先生は空中で「早く降ろしなさい!」と言うが、リディアにはどうすれば降ろすことが出来るのか、そもそも何故先生が浮いたのかすらわからない。
結局のところ、落ち着きを取り戻した先生が自力で何とか脱出して、その場は事なきを得たのだった。
幸いなことに、これは事故だったということで減点等の処罰はなし。
「相手がフリットウィック先生で良かったよな。これがスネイプだったら、絶対五十点は減点されてるよ」
とはロンの談である。
ただ、その日からリディアは、授業でも実技が本格的に始まるまで、不用意に杖を振らないようにとの指示が出されていた。
そして今日、とうとう全員で魔法を使ってみようということになって。
リディアも杖を振る許可を得て、こうして羽を前にしているのだけれど。
フリットウィック先生は、不安が拭いきれていないらしい。
繰り返しリディアに注意するよう呼びかけて、ようやく全員にGOサインを出した。
「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」
あちらこちらからそんな叫び声が木霊する。
最初は先生に教えられたとおり、慎重に正確に。
しかしだんだんと声は大きく、腕の振りは雑になってくる。
しまいにシェーマスなどは、杖で羽をつついて火をつけてしまった。
上手くいっているペアは少ない。
一方リディアはといえば、またフリットウィック先生に釘を刺されないうちに、早々と羽を浮かせてしまったらしかった。
そしてどうやらコツをつかんだようで、授業の終わる頃には浮かべた羽を、あっちへふよふよ、こっちへふよふよと漂わせて遊べるまでになっていた。
そんなリディアが、隣であわあわ慌てふためいているネビルを眺めていた時だ。
後ろのハーマイオニーとロンのペアが座る席から、刺々しい会話がリディアの耳に飛び込んできた。
「だめよ、ロン。あなた言い方が間違ってるわ。ウィンガーディアムのガーはもっときれいに伸ばさなくっちゃ」
「そんなによくご存知なら、君がやってみろよ」
ハーマイオニーの言い方にカチンと来たロンが、投げやりにそう言い放つ。
もしもその時、ハーマイオニーの羽もロンの羽と同じく浮き上がったりしなければ。
もしかすれば、あんなことにはならなかったのかもしれない。
いまより激しい口論になっていただろうことは間違いないが、少なくともハーマイオニーが女子トイレに閉じこもるなんて事態は避けられたことだろう。
しかし幸か不幸か、ハーマイオニーの羽は彼女の杖と呪文にしたがってふわりと頭上高く浮き上がったのだ。
そしてその後、授業が終わり、次の教室へ移動する生徒たちでごった返している廊下でのこと。
「だから誰だってあいつには我慢できないって言うんだ。まったく、悪魔みたいな奴だよ」
ロンがハリーにそう愚痴ったすぐ横を、ハーマイオニーが足早に追い越していった。
それをみたハリーが、聞こえてたみたいだよと気まずそうに言うけれど、ロンは強がるように鼻で笑って。
「それがどうした。誰も友達がいないってことは気がついてるだろうさ」
ふいとそっぽを向くロン。
しかしその直後。
「―――ッ!?」
ゴツ、という鈍い音が、真上からロンの頭部に直撃した。
隣にいたハリーはぎょっとして目を見開く。
思わず視線をやったその先にいたのは、それなりに分厚い妖精呪文の教科書の角っこを、背後からロンの頭めがけて振り下ろしているリディアの姿で。
ロンは突然脳天にクリティカルヒットした重たい衝撃に、涙目になりながら頭を押さえ、ばっと後ろを振り返る。
「なにするん―――」
「言い過ぎ。向こうにも問題はあるけど、今のはロンが悪い」
抗議の声をあげようとしたロンにぴしゃりと言って。
怒っているのかいないのか、その落ち着き払った表情からは計り知れないが、ロンにはリディアのその得体の知れない無表情に言い返せるだけの気迫も根性もなかった。
そしてその後の授業にハーマイオニーの姿はなく。
午後の全ての授業が終わり、夕食の時間間近になってもなお、ハーマイオニーは姿を現さない。
今日はハロウィンだ。
生徒たちは活気づき、夜のパーティーを今か今かと待ち望んでいる。
しかしリディアだけは相変わらず、例外の道をひた走ることになっていた。
食堂へ向かう途中で、ふと耳に入ってきた会話。
「―――ハーマイオニーが女子トイレに篭もって出てこない―――」
「……………」
同室のラベンダーとパーバティがひそひそ囁きあう様子を無言で眺めていたリディアは、何を思ったか突然くるりと踵を返すと、おもむろに食堂へ向かう人の流れを一人逆走し始めた。
こんな日にトイレへ篭城する理由なんていわずと知れたこと。
午前中のあの一件に決まっている。
ようやく人の波から抜け出たリディアは、そのまま女子トイレへと足を向ける。
しかし、一度だけ不意に立ち止まった。
自分は行ってどうするつもりなのだろうかと。
はたと浮かんだ疑問にしばらく顎に手をやって考えたけれど、答えの出てくる様子はまったく窺えなくて。
リディアは再びトイレへ向かって歩き出した。
行ったほうが、行かないよりはマシな気がする。
そんな曖昧な理由で自己完結して。
ロンの失言に無言の制裁。
力関係はどうやら ヒロイン>ロン なご様子。
――― 勝手にうんちく にがついつか ―――
★ 評価は五段階 ★
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