11 苦手意識
「そこで何をしている」
たまたま図書館へと足を運んだ時、禁書の棚の近くでうろうろしている生徒の姿を見つけて声をかけた。
どうせまた、ろくでもない好奇心で近づいたに違いない。
セブルス・スネイプはそう考え、減点対象だと早くも心に決めたのだけれど。
振り返ったその生徒の顔を見た途端、眉間に深い皺を刻んだ。
「スネイプ先生」
腕に大きな書物を抱え、その首にあるネクタイは赤を基調としたストライプ。
誰かのお下がりなのか、どこかくたびれた大き目のローブに包まれた身体は、その年齢の平均よりも小さく。
スネイプの減点優先順位からすれば、ぶっちぎりトップをひた走る獅子寮の所属生徒である・だった。
普段ならばグリフィンドールから減点する口実ができて、不敵な笑みの一つでも浮かべようものなのに、この時のスネイプは少し違っていた。
眉間といわず目といわず、その不機嫌さを身体全体から惜しみなく発しながら、スネイプはずいぶんと下方にあるを見下ろす。
大半の生徒は皆、こうされるだけで萎縮するものなのだが。
はそんな様子などかけらも見せずに、真っ直ぐにスネイプを見上げていた。
「………その棚の向こう側は禁書だ。お前のような一年生が近づいてよい場所ではない」
処罰の対象にしてもいいのだぞ、と脅しをかけてみても結果は変わらない。
こういうところが調子を狂わせるのだ。
常に人をからかうことしか考えていない、あのくそ忌々しい奴らを連想させる双子のウィーズリーとも違う。
平たく言ってしまうならば、何を考えているのかわからないその無表情さが不気味といえば不気味で。
それに加えて何よりも忌々しいのは、この・という生徒が、己の魔法薬学の最初の授業で唯一、注意する隙も、減点する暇も見せなかったという事実だ。
何気ない顔で他の連中に混じって作業を進めていただけなのに、覗いた手元はまったくのミス知らず。
いちゃもんをつけることさえ躊躇うようなその出来に、思わず眉間に皺が寄ったものだ。
それ以来、この・という生徒は、他の連中とはまた違った意味でブラックリスト入りを果たしているのだけれど。
「本を、探していたんです。薬草学の図鑑で」
これと同じものを、と腕の中のそれに視線を落とす。
見てみればそれは、一年生の必修本の一つで。
「もう既に持っている物をなぜ探す必要がある。言い訳ならもっとましなことを言いたまえ」
じろりと睨みつければ、はおもむろにその図鑑をひっくり返し、裏表紙をぱたりと開いて見せた。
でてきたページの一点を指差して。
「古本で買ったので、発行年数が古いんです」
それだけ言ったが何を言わんとしているのかは、皆まで聞かずとも容易に想像がつく。
つまり、自分が持っている図鑑には載っていない内容が多々あるのだと。
それで図書館で新しい発行年数のものを探し、書き写しておこうと。
そういうことなのだろう。
なんとも非の打ち所ない正論なのだが、スネイプの眉間の皺は先ほどと比べて二割増しになった。
「ふん、それで図書館内を徘徊しているというわけか。だが、だからといって禁書の棚に近づいていい理由にはならん。即刻この場所から立ち去りたまえ。命が惜しいのならな」
捨て台詞のようにそう吐き捨てて、スネイプは黒いローブの裾をさばいて踵を返した。
そのままこの場を去ろうとする。
が、しかし。
「スネイプ先生」
予想外にも後ろから呼び止められ、思わずその足を止めてしまった。
そんな義理などないというのに何故、という思いからか、目つきが一層鋭くなる。
「―――何かね」
完全には振り返らず、肩越しにを見やって。
「どの棚にこれがあるか、ご存じないですか」
「知らん」
なぜ我が輩がよりにもよってグリフィンドール生の質問に答えてやらねばならぬのか。
スネイプは何のタメもなしに、はっきりきっぱり切り捨てた。
「司書にでも聞けばよかろう。我が輩に聞くな」
そう言って再び歩き出そうとしたけれど。
「いま司書の先生がお留守なんです」
「…………」
まるで呪われているようだと。
思わず考えてしまったことは決して表に出しはしない。
出してなるものか。
そんなことは、自身のプライドが許さなかった。
スネイプは再び背を向けた時の体勢のまま、口だけ開いて言う。
「図書館には基本的に必修本のたぐいは置いていない。全員が持っている物を置いたところで、利用する者がおらん」
「はあ、なるほど」
いま気づいたというように、こくこくと頷く。
しかしそれではどうしたものかと、首をかしげて顎に手をやって。
教科書の内容が若干違っていても授業を受けること自体には差し支えないが、もしも課題が出されたときに古い内容のまま使えば、間違った情報を引用してしまうかもしれない。
そうなれば成績に関わる大問題で、どうしても放っておくわけには行かないということになるのだけれど。
そんなことを考えていると、不意に前方から低い声が聞こえてきた。
「…………ついて来い」
「はい?」
ぼそりと呟かれた言葉に聞き返す。
しかしスネイプは、そのままスタスタと歩き出してしまう。
要領を得ないはその場に立ち尽くし、その後ろ姿を見送るのだが。
一人ずんずん進んでいたスネイプの足が、突然ぴたりと止まった。
そして肩越しに振り返り。
「早くしろ!」
ここが図書館だということも忘れ、大きな声でに向かって怒鳴りつけた。
そうされたは、何がなんだかよく解らないままにその後を追う。
追いかけるその背中がこれ以上なく不機嫌さ満点のオーラを発していたので、結局目的の場所にたどり着くまで、は質問することも出来なかった。
そうして、スリザリンの寮監セブルス・スネイプ教授の後に、グリフィンドール生が一人大人しくついて行くという衝撃的光景を、学校中に惜しみなく披露したがたどり着いたのは、何を隠そうスネイプ教授その人の部屋で。
スネイプは部屋に入るなりそのまま奥に消えて、は一人取り残されてしまった。
ぐるりと周囲を見回してみれば、壁一面に設置された本棚とそこから溢れるように積み置かれている書物。
鍋やビーカーや、にはよくわからない器具もそこここに転がっていて、怪しい雰囲気は満点だ。
しかも薬の材料が納められている棚はきちんと整頓されているにも関わらず、その一つ一つの色がエグいせいでなんともおどろおどろしい。
この開いたままにしてある本は読んでいる最中なのだろうかと、がなんとなく眺めていると、奥から戻ってきたスネイプがつかつかとに近づいてきた。そして。
「持っていけ」
ぶっきらぼうな声と共に、一冊の本を差し出す。
それは、が腕に抱いているものとまったく同じ装丁のもの。
は差し出されたそれと、上のほうから視線だけでこちらを見下ろしているスネイプの顔とを交互に見やった。
相変わらず眉間には皺が寄り、不機嫌オーラが満載だ。
「でも………」
「口答えは許さん。明日の午後までに返しに来い。もし遅れればグリフィンドールから五点減点だ」
「はあ………」
そんなに嫌なら貸さなきゃいいのにと思うほど、スネイプの表情は苦々しかった。
しかしせっかくのご好意なので、はありがたく受け取っておく。
ありがとうございますと礼を言って。
「あの………」
「用が済んだのならさっさと出て行け。我が輩は忙しい」
が図鑑を受け取るのを見るや否や、スネイプはさっさと背中を向けてしまう。
そして机の上の書物を手にとって開き始めた。
しかしはその背中に向かい、わずかに小首を傾げて。
「魔法薬学の教科書も書き足さなきゃいけないんです」
「…………………」
しばしの沈黙。
しかしその後、スネイプの手にあった本が苛立たしげな荒々しい音をたてて閉ざされた。
そして再びスネイプが部屋の奥に消える。
戻ってきたその手にあったのは、魔法薬学で一年生が使っている教科書で。
無言でに押し付ける。
そうして今度こそに背を向けて。
「………先生」
「なんだっ!」
まだ何かあるのかと、思わず声を荒げてしまったスネイプ。
しかし案の定、は平然とした顔で。
「明日の午前中の授業用に、鍋と秤をお借りできますか?」
三冊の本を抱えたまま、無表情に小首をかしげた。
今度はとうとう、スネイプも振り返って。
「そういうことはまとめて言わんか!」
そう叫ぶと、またもや部屋の奥に入っていった。
その後、スネイプ教授の部屋から出てきたが手にしていたものは。
授業用の銅鍋と秤。
そして、その小さな身体には少々酷なサイズの分厚い三冊の教科書と、それらを入れるにはちょうどいい大きさの、部屋に入る前には確かに持っていなかった手さげ袋だった。
スネイプ先生とヒロインさんの関係。
どうやらヒロインさんは扱い難い生徒な模様。
――― 勝手にうんちく いちがつにじゅうくにち ―――
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★★★★★
★ 評価は五段階 ★
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こちらの携帯版は、社会の喧騒に疲れた時の現実逃避に………。
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ハリーポッターと謎のプリンス 日本語版
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ついに発売日決定です!(ドンドンパフー)
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六巻の話題がまことしやかに交わされておりました。
英語の出来ない人間にはまさに生き地獄!(←大袈裟)
ああ、ですがしかし!
ついにきたのですよ、皆さん! 来るべき日が!(笑)
ここでは多くは語れません。
ていうか、語る必要もないでしょう。(そしてネタもない)
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確実に手に入れたい方は、予約をお勧めします。はい。
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