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 10 ホグワーツは危険がいっぱい






 別に、助けようと思ったわけではない。
 あんな上空に連れて行かれた人間を助ける術なんて、自分にはないと思っていたし。


 ただ、縮こまったネビルの身体が傾いて、皆が悲鳴をあげて。

 落ちる、と、思った瞬間。


 まるで箒に引っ張られるように、身体は宙を走っていた。

 どうやったのかなんてわからない。
 本当にもう、ただただ箒にしがみついていただけだった。

 けれど、今思い返してみれば確かにあの一瞬、身体の奥のほうが不自然に熱をもっていたような気もするわけで。


「摩訶不思議………」


 ついさっきまでひどい痛みと熱を訴えていた左腕が、今ではすっかり元通りになっているのを見つめて、はポツリと呟いた。
 念のためにと医務室のマダム・ポンフリーに言われて、その後の授業を休み夕食を医務室でとった
 医務室に運びこまれてから一度意識を失って、次に目を覚ました時には若干痛みは残るものの左腕は元通り。そうしてマダム・フーチとマダム・ポンフリーの二人から、しっかりとお説教をたまわった。

 本当なら死んでいてもおかしくないと。

 二度とこんな無茶はしないと約束させられたが、事情が事情なので減点は無しとのこと。
 ネビルの怪我は打ち身だけで、それほどひどくはなかったらしい。
 マダム・ポンフリーの話では、自分が気を失っている間にハリー、ロン、ハーマイオニーの三人が見舞いに来てくれたそうだ。

 は寮へ戻る仕度をしながら、明日の朝にでも礼を言おうと考えた。
 何しろ今はもう、消灯時間も過ぎた真夜中だ。
 マダム・ポンフリーには明日の朝までここにいてかまわないと言われたが、どのみち一時間目の授業へ行く前に用意を取りにいったん寮へ戻らなければいけないので、今日のうちに戻ると告げた。


 マダム・ポンフリーに礼を言って、医務室を後にする。

 夜の闇が広がる廊下は、松明に照らされて、昼よりも不気味さが三割増しだ。
 コツコツと反響する足音。
 誰もいる気配がしない。

 規則で禁じられているために、こんな夜中のホグワーツを歩くのは初めてだった。
 もしも今、見回りをしている管理人のフィルチに見つかったりしたら、はたして彼は自分の言い分を聞いてくれるのだろうか。

 はふとそう思った。

 彼はずいぶん横暴だと聞くし、生徒のことを嫌っているのだとも言う。
 となれば、やはり言い訳は聞いてもらえそうにない。
 まぁ、いざとなればマダム・ポンフリーに証言してもらうという手もあるかと、は一人納得して足を進めた。

 そうして、もういくつ目になるかわからない廊下の角を曲がろうとした時。

 の前方に、一対の仄暗い光がともっているのが見えた。
 松明の明かりが何かに反射しているわけではない。
 どちらかといえば蛍のような少しだけ緑がかった光が、廊下の中央、地面にとても近い位置でこちらを見つめている。


「……………」


 は一度立ち止まり、その得体の知れない光をじっと見つめた。
 しかし、しばらくするとおもむろに足を踏み出し、そちらへと近づいていく。
 なぜならその光のある先が、グリフィンドール塔へと繋がる道だったので。
 変に回り道をしては、きっと迷って朝まで徘徊することになるだろうと思ったのだ。

 その一対の光は、が近づいても一向に動く気配はなかった。
 その輪郭が、近づくことでだんだんとはっきりしてくる。
 そして。


「………ミセス・ノリス?」


 その正体を知って、は彼女の名前を口にした。

 管理人フィルチの猫。
 彼の有能な助手。

 見回りをする彼女に見つかれば、それはフィルチに見つかったも同然だ。
 ミセス・ノリスは飼い主と同じく、規則違反にはとても厳しいと聞く。
 きっと今ごろ、彼女は自分には到底わからない方法でフィルチに連絡しているところなのだろう。

 ここに違反者がいるぞ、と。

 はぽり、と頬を掻き、面倒くさいことになりそうだとまるで人事のように思った。
 確かに自分は真夜中に出歩くという規則違反を犯しているが、それにはちゃんとした理由があってやましいことはない。

 だがしかし、相手が相手なのであっさりとその言い分を信じてもらえるとも思えなくて。
 寮に帰る時間はずいぶん遅くなりそうだと、は溜め息をついた。

 が、しかし。

 待てど暮らせど、一向に誰かがやってくる気配はない。
 もうミセス・ノリスに見つかってから数分が経とうとしている。
 は不思議に思って、目の前で最初に見つけた体勢のままこちらを見上げているミセス・ノリスの前にしゃがみこんだ。


「………ご主人様を呼ばないの?」


 静かな声で聞いてみる。
 するとミセス・ノリスは立ち上がったかと思うと、何を思ったのかしゃがんでいるの足元へと擦り寄ってきたのだ。
 これにはさすがのもきょとりとして。

 話に聞く限りでは、ミセス・ノリスは飼い主のフィルチと共に、ホグワーツ全生徒共通の敵であるはずだ。
 ちょっとでも違反する生徒を見つければ、すぐさまフィルチにご注進。
 まるでそれを生きがいとでもしているかのような仕事っぷりだと言うことだったのに。

 たった今、違反者であるはずのの目の前にいる彼女は、まるで普通の猫のようにじゃれつくばかり。
 ためしにが手を差し伸べてみると、気持ち良さそうにごろごろと喉を鳴らして大人しく撫でられている。
 はこの事態に首を傾げるばかりだったが、とりあえずミセス・ノリスの手触りが思いのほか良かったので、しばらくそのまま撫で続けた。

 その戯れが数分ほど続いた時だっただろうか。
 ごろごろと喉を鳴らしていたミセス・ノリスの耳が、不意にぴくりと身じろぎした。
 そして伏せていた身体を起こし、辺りを窺うように首を長く伸ばす。


「どうしたの?」


 ミセス・ノリスの変化に首を傾げただったが、次に遠くから聞こえてきた声を耳にして立ち上がった。


「―――生徒がベッドから抜け出した! 妖精の呪文教室の廊下にいるぞ―――」


 その癇に障るけたたましい声は、ポルターガイストのピーブスだろう。
 ベッドから生徒が抜け出したということは、自分の他にもこの真夜中のホグワーツを歩き回っている人間がいたらしい。
 立ち上がったがそんなことを考えていると、足元にいたミセス・ノリスがすっくと立ち上がり、音もなく駆け出していった。
 おそらくその現場に向かったに違いない。
 小さくて俊敏な彼女の影は、瞬く間に夜の闇に紛れてしまい、の前から掻き消えるように姿を消した。

 後に残されたはしばらくミセス・ノリスが走り去った方向を眺めていたが、再び先ほどまでと同じ足取りで、グリフィンドール塔へと向かって歩き出した。
 とりあえず、妖精の呪文教室には近づかないようにしようと思いながら。
 せっかくミセス・ノリスが見逃してくれたものを、わざわざ捕まりに行くこともない。
 きっとそこにはフィルチがいるのだろうから。

 豪胆にも規則を破って真夜中のホグワーツを徘徊しているのはいったい誰なのだろうかと考えつつ、はマダム・ポンフリーに教えられたとおりの道を進み、そしてようやくグリフィンドール塔の太ったレディの肖像画前までたどり着いた。
 婦人はわずかに目を丸くする。


「まあ、あなたこんな時間なのに帰って来たのね。腕は大丈夫?」

「大丈夫です。ご心配おかけしました」


 いたわってくれる婦人に礼を言って、は寮の中へ入るための合言葉を口にしようとした。
 しかしそれは、背後から聞こえてきたけたたましい足音に遮られてしまう。

 振り返ってみればそこには、ものすごい形相で息を乱し、汗だくになっているハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビルの姿。
 四人は満足に口をきくこともできないようで、や婦人の前にきてもしばらく俯いて肩で息をするばかりだ。


「………おかえり」


 そんな彼らを見下ろして、は一言そう言った。
 それに答えたのは先頭にいたハリーで。


「た、ただい、ま………」


 息も切れ切れにやっとのことでそう答える。
 もしかしなくとも、先ほど聞こえてきたピーブスの声が指す違反者とはこの四人のことだろう。
 いったい何だって彼らがそんな暴挙に出たのかはわからなかったが、とりあえずは皆が落ち着くのを待つことにした。


、帰ってきてたんだね。腕の怪我は?」

「うん、もう平気。マダム・ポンフリーに直してもらった」

「私たち、夕方お見舞いにいったのよ。そしたらあなたが寝てるからって入れてもらえなかったの」

「うん、聞いた。わざわざありがとう」

、本当にごめんね。僕のせいでそんな大怪我を………」

「私が勝手にしたことだから」


 落ち着くや否や、次々としゃべりだす。
 まだ心配そうな顔をしているハーマイオニーやロン、泣き出しそうになっているネビルに、はそれぞれ答えてやる。


「ほんとに怪我が治ってよかったよ。心配してたんだ」

「ありがとう、ハリー。ところで………」


 再び誰かがしゃべりだす前に、は最も重要なことを切り出すべく言葉を続けた。
 それはすなわち………。


「そろそろ中に入ったほうがいいんじゃない?」


 いくら寮の前とはいえ、こんな所でいつまでも突っ立っていてはいつ誰に見つかるとも知れない。
 の言葉に現状を思い出したハリーたちは、慌てて合言葉を口にして、グリフィンドール塔の中へと入った。


「それにしても、あんな怪物を学校の中に閉じ込めておくなんて、連中はいったい何を考えているんだろう。世の中に運動不足の犬がいるとしたらまさにあの犬だね」


 寮に戻ってきた途端、緊張の糸が切れたのかロンがその場に座り込みながらそう言った。


「犬?」

「ああ、そうなんだよ。実は僕ら、マルフォイとの決闘に行ったんだけど、それが―――」

「ねぇ、ちょっとあなたたち、いったいいつまでこんなところにいるつもりなの?」


 ハリーが事の次第をに説明しようとすると、安堵と共に怒りまで戻ってきたらしいハーマイオニーが、ロンたちを睨みつけてそう言った。
 腰に手を当てて、高飛車に言い放つ。


「わかってる? もしかしたら私たちみんな、今夜殺されていたかもしれないのよ。あなたたちはさぞご満足でしょうけど、もっと悪いことに退学にまでなっていたかもしれないわ」


 そしてご丁寧にも、ロンの言う犬がただの床の上ではなく隠し扉の上に立っていたのだと指摘して、居丈高につんとそっぽを向く。


「では皆さん、お差し支えなければ休ませていただくわ」


 肩のガウンを羽織りなおしながら、ハーマイオニーは一人すたすたと女子寮のほうへ戻っていった。
 後に残されたロンが、お差し支えなんかある訳がないと吐き捨てる。
 それを見たは肩をすくめて。


「私も戻るわ。話は明日にでも聞かせて?」


 ハリーが了承するのを見届けると、もハーマイオニーの後を追って自分の部屋へと戻っていった。



 そうしては次の日の朝一番に、ハリーがクィディッチのシーカーに選ばれたこと、ニンバス2000とドラコ・マルフォイのこと、そしてハリーたちが昨夜目撃した、三つの頭を持つ世にも恐ろしい超大型犬の存在を知るのである。





2006/01/23 up

ヒロインさん、ミセス・ノリスに懐かれる(?)の図。
その理由は後々明らかになる予定。


――― 勝手にうんちく いちがつにじゅうさんにち ―――

★ 評価は五段階 ★

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     ここでは多くは語れません。
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