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 1 執拗なお届け






「…………」


 はその日、広くもない部屋の中央にポツリと置かれた、食事の時にすら滅多に使うことのない、丸くて小さなテーブルに向かい、その上に置かれているものをじっと見つめていた。

 椅子は一つ。
 足元にはカーペット一枚敷いていない。
 薄汚れ、古ぼけた色の木の床が剥き出しになっていて、その上にベッドと椅子とこの机が置かれてある。
 天井は斜めに傾斜していて、一番低いところではまっすぐ立つこともできやしなかった。

 ワンルームでお世辞にもいい部屋とは言えないが、室内には水をくめるだけの流し台がついているし、小さなポットでお湯を沸かせるだけのコンロもある。
 だからは別段、この生活が不自由だとも感じたことはなかったのだけれど。

 ただ最近になって一つだけ。

 ひどく迷惑というか気になるというか、若干不満に思うところができてしまっていた。
 それというのも、いま現在目の前の机の上に、無造作に積み重ねられている数十枚にも及ぶ黄色味がかった封筒のことで。
 七月に入ってから突然送られてくるようになったそれらを前に、は少しだけ困った顔をした。

 机の上の山には、今日新しく届けられたものがもうすでに三通も紛れている。まだ午前中だ。
 毎日欠かさず送られてくるその手紙の枚数が、日に日に増えているように思うのはきっと気のせいではない。

 そうこうしている内にまたもや窓の外に、白い影が横切るのが見えた。
 ちらりと視線をやってみれば、案の定白くて丸くてずんぐりしたモノがこちらを凝視していて。
 目が合ってしまってはもう逃げられないことをここ数日で学んでいたは、仕方なく窓を開けてやった。

 すると、滑り込むように入ってくる白いふくろう。
 狭い室内を器用に滑空すると、机の上の手紙の山に咥えていたそれをぽとりと落とす。
 そうしてどこにもとまらないまま、また窓から外へと飛んでいってしまった。

 その後ろ姿を見送ってから、はまた新たに加えられた山へ視線をむける。
 これで今日の分は四通になった。
 このまま行けば、今日も記録を更新することになるだろう。

 開けていた窓を閉ざし、はさっきと同じように机に向かった。
 一番上の、今届いたばかりのものを手にとってみる。

 黄色がかった羊皮紙に、エメラルド色のインクで書かれた宛名。
 そこには間違いなくここの住所と、本人の名前がしたためられていて。


 ――― ロンドン アパート『シティ』屋根裏の部屋 様 ―――


 届けられた封筒の中身を読んだのは、結局一番最初に届いた一通きりだ。
 朝、起き抜けに窓から届けられたものを開けて、寝惚け眼で文面を読み。

 そうしてそのままゴミ箱へ入れた。

 こんなおんぼろアパートの住人にダイレクトメールを送りつけるなんて、滅多にあることではないのだけれど。
 それでもこれは、明らかに何かの勧誘で。
 しかも入学が許可されたとか、必要な教材がなんだとか、よりにもよって学校の案内だったものだから。

 それだけ認識すると、次の瞬間にはきれいさっぱり忘れさった。
 学校へ行って勉強する前に、食費と水道代と、できることなら電気代も稼ぎたい。
 今年でようやく十一歳になる子供が一人で暮らしていくには、現代の社会はなかなか厳しいのだ。
 だからは、最初の手紙を読んだその朝もいつもと変わらず、まっすぐ仕事へ出かけていった。

 手紙のことなど思い出しもせず、順調に午後を迎えて。
 そうして昼食を取ろうとしたところに、またもやあのふくろうが現れたのだ。そのくちばしに、まったく同じ封筒を咥えて。

 あれから何日が過ぎ、何度手紙を捨てたことだろう。
 いい加減、小さなゴミ箱は一杯になり、けれども送られてくる手紙の数は増える一方で。
 仕方なくこうして机の上に積んであるのだけれど。


「…………」


 は手にとった封筒を裏返し、紫色の封印をはがしてみた。
 中から出てきたのは、やはり前に読んだものと寸分たりとも違わない書類。
 もう一度だけざっと目を通して、は再び机の上へ戻した。

 椅子から立ち上がり、机に背を向ける。

 結局自分には縁のないことなのだ。

 そう心の中で呟いて。


 またいつもの日常へと戻っていった。





2005/10/23 up

激烈に短いので、次の話も続けてUP。
繋げるには少々具合が悪かったのです。
それにしても、ホグワーツからの入学許可証をゴミ箱行きにするヒロインって………。
前代未聞かもしれません。





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