0 プロローグ
朝、目が覚めて。
小鳥がさえずる音と、差し込む日の光をぼんやりと確認してから。
おもむろに、のそりと身体を起き上がらせた。
硬いベットが軋み、耳障りな音を響かせる。
眠い目をこするでもなく、ただぼうっと虚空を眺めて。
「……………」
そうして何気なく視線をやった窓の向こうに、じっとこちらを凝視しているずんぐりした白くて丸いシルエットの生き物を見つけてしまい。
「……………」
なぜだか目が合ってしまったので仕方なく。
しばらく無言で見つめあった。
ここはロンドン。その下町。
ふくろうなんて、飛んでるはずがないところ。
*
その日のお昼間。
正午を随分すぎてから、今日はじめての食事をしようと公園のベンチに腰かけた。
足元にはハトがわんさかたむろしている。
時おり座っているベンチの上まで上ってくるのもいるけれど、いつものことなので別段驚かない。
両手にすっぽりおさまってしまう程度の包みを取り出して、さあ食べようと膝の上に広げた。
「………………」
ふと。
すぐ隣に、ハトにしてはやけに丸くて大きいような気配を感じて。
膝の上の包みをそのままに、ゆっくりとそちらを見下ろせば。
「………………」
明らかにハトではない白い塊がこちらを凝視していたので。
ハトやら人やらが騒がしく動き回る中、お互いぴくりとも動かぬまま。
二分近く見つめ合った。
ここはロンドン。その中心街。
ふくろうなんて、いるわけがないところ。
*
太陽はとうの昔に姿を隠し、すっかり夜も更けて月が頭上に輝く頃。
ようやくその日一日を終えて、明かりの灯らない自分の部屋に向かって歩いていた。
時計の針は、もう十一時を指そうとしている。
家路に着く前、店の残り物を分けてもらったので、今日はそれを食べてから寝よう。
いやいやそれとも、明日の昼に取っておこうか。
手の中にある包みの存在にほんの少しだけささやかに浮かれながら、ぎしぎし軋む木造の古い階段を、極力音を立てないように上っていった。
薄暗い、申し訳程度にしか明かりのついていないさびれた廊下。
薄闇が立ち込めるその先に、ぼんやりと浮かぶ白いシルエットを見つけて。
「………………」
充分に距離をおいて立ち止まり、人の部屋の前を占拠する白くて丸くてずんぐりしたそれと、じっくりしっかり見つめあった。
ここはロンドン。その下町。…………の、おんぼろアパートの屋根裏廊下。
ふくろうが住み着くには、どうしたっておかしなところ。
名前変換がありません。
ハリポタキャラが出てきません。
ヒロインはハリーたちと同い年。
御歳10才のいたいけな少女………のはずです。