鋼の錬金術師ゲーム第三弾!『鋼の錬金術師3 神を維ぐ少女』 完全オリジナルストーリーでボリューム満点。
                 とうとうアルフォンスの操作も可能になって、益々レベルアップしたこの一作。やらない理由が見つかりません。







 15 犯した禁忌






「この野郎………やりやがったな、この野郎!」


 タッカーの胸倉を掴み、力任せに壁に押し付けたエドの怒号は、薄暗い室内に驚くほど響いた。

 人語を解する合成獣の研究。

 動物実験での限界を見たタッカーは二年前に妻を、そして今回は実の娘をつかって練成した。
 それはまさしく、人の命を弄ぶ所業。
 犯してはならないはずの、錬金術の禁忌。


「こんなことが許されると思ってるのか!? こんな……人の命をもてあそぶようなことが!!」


 やりきれない思いと激しい怒りがエドの中で渦巻く。
 己の娘を実験材料にした男。
 つい昨日まで一緒に仲良く遊んでいた、あの元気な幼い少女を。
 国家錬金術師の資格を、特権を維持するという、くだらない目的のためだけに………!


「人の命!? ははっ! そう、人の命ね! 鋼と白銀の錬金術師!」


 エドの肩越しにを見て、タッカーは吐き捨てるように言う。
 狂った笑みを浮かべながら。


「君や君の妹の手足、それに弟の全身! それも君が言う、人の命をもてあそんだ結果だろう!?」

「――――――っ!!」


 その一言が、かろうじて保っていたエドの一線を断ち切った。
 続けて聞こえてくる殴打の鈍い音。
 その合間に響くのは、タッカーの狂った笑い声で。


「目の前に可能性があったから試した! たとえそれが禁忌であるとしても、試さずにはいられなかった!!」

「―――ちがうっ!!」


 耳を覆いたくなるような叫びが木霊する。
 はそれを聞きながら、無言で合成獣の―――ニーナとアレキサンダーのもとへ歩み寄って。

 そっと。

 血の滲んだ生身の方の手でその頭を撫でた。


「………ニーナ?」


 静かな声でそう呼びかければ、ニーナとアレキサンダーは僅かに首を傾げる。
 こちらを見上げるうつろな二つの瞳に、うっすらと笑みを浮かべている自分が映っていた。


「お………ねえ、ちゃ」

「…………」


 昨日までと同じように自分を呼ぶ身体に腕を回す。
 ふさふさとした少しくすんだ金色の毛並みのそれを、ぎゅっと抱きしめて。


「………あ、そぼう……あそぼ、う……」


 つたなく繰り返される言葉。
 それを耳元で聞きながら。


「……………アレキサンダーも一緒に?」


 そう言ってやれば、長い尻尾がパタパタと揺れる。


「あそ、ぼう………やくそ、く………あそぼう」


 何度も、何度も。
 ニーナは、アレキサンダーはそう繰り返す。

 憶えているのに。

 遊んだ記憶も、約束も、その中にあるのに。

 だけどここにいるのは、ニーナでも、アレキサンダーでもない。


「…………ごめんね。約束したけど、でも、お姉ちゃん、なんだか今日も、眠たいなぁ………」


 もう一度しっかりと、その身体を抱きしめる。
 二人の身体を。
 しっかりと。


「―――兄さん、それ以上やったら死んでしまう」


 不意に、背後から聞こえてきた静かな弟の声に、はゆっくりとその身体を離した。
 振り返れば、血だらけのタッカーと、拳を振り上げたエドと、その腕を掴んで止めているアル。
 無言のままにそちらへ近づいて。


「………エド、ニーナが、見てる」


 ポツリとそう言えば、エドのタッカーを掴んでいた腕から力が抜けた。
 ずるりと床にへたり込むタッカー。
 それを一瞥もせずに、とエドはアルに促されるまま出口へと向かう。

 途中、アルがニーナに語りかけて。
 ごめんねと繰り返す弟の姿を見ながら、は窓の外の雨音を聞いていた。


 雷鳴さえ聞こえる空は、泣き止みそうもない。









           *









 夢を見る―――。

 同じ夢。



『お母さん、これ見て!』

『あら、素敵なカップ。どうしたの、これ?』

『わたしが練成したの。エドの分と、アルの分と、お母さんの分と。皆おそろいよ』



 穏やかで、暖かくて、優しくて。

 光に満ちていたはずの思い出。


 それを真っ赤に染め上げたのは、他の誰でもない自分自身。

 己の身体から流れ出る血液が、全てを赤く染め上げていく。


 息すら忘れるほどの痛み。

 痛みすら忘れるほどの衝撃。


 完璧だと信じたものは間違いで。

 払った代償はあまりにも大きくて。




『―――どうしては、お母さんを作ろうとなんてしたの? そんなこと、できるわけが無いのに』









「―――――っ!!」


 見開いた視界いっぱいに飛び込んできたのは、宿の部屋の薄暗い天井だった。
 布団を握り締め、仰向けのまましばらく息を詰める。

 心臓の音が、耳の奥でうるさいほどに鳴り響いている。
 しばらく瞬きを繰り返し、ようやくここが現実なのだと知ると、は上体を起こして息を吐いた。

 乱れた髪が顔に落ちかかる。
 それをかきあげた右手には、真新しい白い包帯が巻かれていて。


「…………エド? アル?」


 声をかけてみるが返事は無い。
 いつも使っている向かいのベッドにも、その姿は無くて。


「………………エド」


 もう一度呼んでみたが、やはり答えは返ってこなかった。
 聞こえてくるのは窓の外の雨音ばかり。

 不意に感じた痛みに抱え込んだ左足は、かちゃりと無機質な音をたてる。
 触れた腕も、鉄の冷たさを感じるのは右腕だけで。
 鉄と鉄のぶつかり合う耳障りな音。


「………………痛……」


 何も感じないはずの作り物の手足が、脈打つような痛みを訴えていた。
 吐く息が熱っぽい。
 なんとなく頭がふわふわするのは、きっと風邪を引いているせい。


 タッカー邸でのあの一件を司令部に知らせた後。
 たち三人は、しばらく雨に打たれていた。
 司令部玄関前の階段に座り込み、ただただその場に蹲って。
 やりきれない憤りと、どうする事もできない現実、してはいけない現実を目の前に、身動きが取れなくなって。


『軍の狗よ悪魔よと罵られてもその特権をフルに使って、元の身体に戻ると決めたのは君たち自身だ。これしきのことで立ち止まっている暇があるのか?』


 冷たささえ感じるロイの言葉にエドは、歯を食いしばったまま叫んだ。

 ―――オレたちはちっぽけな人間だ……! と。

 そうしてそのちっぽけな人間の自分は、ものの見事に風邪を引いて熱を出し。
 今朝方、東方司令部に行ってくるという兄と弟を見送ったのだ。


、俺、司令部に行ってくるから……。アルと二人で待っててくれな』


 絞ったタオルを額に置いて覗き込んできた自分とよく似た顔は、熱に浮かされた頭でもそうとわかるほど塞ぎこんでいて。
 司令部に行くという言葉の意味を察するのは至極簡単だった。
 だから、兄と入れ違いに視界へ入ってきた弟に言う。

 自分は大丈夫だからと。


『でも姉さん、まだ熱があるのに………』


 心配性のアルはそう抗議するけれど、首を横に振って。


『私よりもエドの方が心配………。だから、一緒に行ってきて』


 そう言って促せば、しばらく逡巡した後アルは立ち上がり、扉の方へ足を向ける。
 部屋を出る前にもう一度振り向いて。


『なるべく早く帰ってくるから。姉さんはちゃんと寝てなきゃダメだよ』


 しっかり釘を刺してから、身体をかがめて部屋を出て行ったのだ。
 それが、先ほど目を覚ます直前までの記憶。

 ふと。

 熱のせいか痛みのせいか、うっすらと汗の滲む顔を上げては窓の外に目をやった。
 雨粒が宿の窓を叩いている。
 外は暗く曇っていて、時間を推し量ることは難しい。
 はたして今は朝なのか昼なのか。

 は時計を見ることもせずに、痛む鋼の手足を軋ませながらベッドをおりた。
 熱におぼつかない足元を踏みしめ、洗面台へと向かう。
 鏡に映った顔は僅かに上気していて。
 それでも冷たい水で顔を洗うと、乱れた金の髪を梳いて結いなおした。

 服を着替えて部屋の扉を押し開ける。
 傘も持たずに宿を出て、雨の降りしきる街へ出た。


『―――これしきのことで立ち止まっている暇があるのか?』


 ロイの言葉が、熱の残る頭に響く。
 自分一人だけ、立ち止まっているわけにはいかない。
 エドとアルの二人が歩き出そうとしているのに、自分だけがのうのうと。

 あの日、あの時、共に歩くと誓ったのだ。
 作り物の手足に頼ってでも。
 歩き続けると誓ったのだから。

 肩に羽織ったコートの首元を握り締めて、首をすくめることで少しでも雨から身を守ろうとした。



『―――明日はきっとニーナと遊べるね』

『ホント?』

『うん、今度こそ約束』



 果たせなかったそれを背負ってでも、前へ進まなければ。
 それが、多くを失ったあの日に決めた己の進む道。



 雨の降りしきる街なかを、は一人ひた進んだ。





2005/09/11 up

エルリック兄弟は強いと思う。
転んでも転んでも、必ず起き上がってくるところが。
でもそれよりも、転べること自体が強いと思う。


――― 勝手にうんちく くがつじゅういちにち ―――

★ 評価は五段階 ★

New!遥かなる時空の中で3 十六夜記  ★★★★★
   ついに発売決定!
   あの 『遥かなる時の中で3』 の続編です!
   今までの1から2、2から3のように、時代やキャラが変わるのではなく、
   遥か3のキャラクターたちがそのまま持ち越される今回のゲーム。
   舞台は遥か3の最終局面である、壇ノ浦の合戦で平氏に源氏が勝利した直後から始まります。
   合戦が終わり、神子や八葉たちにも平穏が訪れるかと思われたその矢先。
   大将である源頼朝が、人々の信仰を集める神子とその仲間を廃そうと策をめぐらせる。
   反逆者として処断されそうになった神子たちは寸前でその手を逃れ、一路奥州は平泉を目指します。
   この平泉と言う土地は、八葉の一人である九郎と弁慶が少年期を過ごした縁の場所なのですが、
   そこで僅かな平和を得たのも束の間。
   頼朝の追っ手はこの平和な奥州にも伸びてくるのです………。
   『遥か3』 では戦の進行が主軸にあったため、
   どこか殺伐とした、張り詰めた緊張感の中で進んでいたストーリー。
   キャラたちとのイベントも、戦の影を拭い去ることは難しいものが多かったように思います。
   もちろん、その緊張感溢れる中で繰り広げられる、
   意中の人との恋愛がまたかなりツボだったりするのですが………。(笑)
   今回の 『十六夜記』 では、それに加えて 蜜月イベント と呼ばれる、
   平穏な生活の中で起こるイベントが用意されています。
   戦を離れた 「拠点」 で一時の平穏な日常を送る八葉たち。
   リラックスできる状態だからこそ垣間見せる彼らの新たな一面を知ることの出来る、
   なんともナイスなイベントなんです!
   とくにリズ先生なんか気になりませんか? リラックスしている先生って、先生って………っ。
   もうそれだけで萌えますとも!

   と・こ・ろ・がっ。

   この 『十六夜記』 の注目点はそれだけじゃないんです。
   大注目なのは新たなキャラクターの存在!
   計3人出てくるのですが、落とせそうなのは2人かな?
   そしてこの二人の内の一人が、あの『遥か3』では敵方だった、平知盛と瓜二つなんですよ!
   性格は全然違うようです。だから別人なのかなぁ。微妙なところです。
   知盛が清廉潔白、素直従順になったような顔つき。そして性格………。
   どうせなら前のままの方が良かったです。 彼のあの退廃的な雰囲気がかなりツボだったんですよ私。
   その点でいうと、もう一人の新キャラの方がいいかもしれません。
   ていうかこちらは、管理人のツボにクリティカルヒットしました!(笑)
   ビジュアルはもちろんのこと、その性格設定もかなり惹かれます。
   眼光鋭い怜悧な青年って………、黒髪長髪に眉間に皺って………っ!
   彼がツボじゃなくて誰がツボだって話ですよ!
   むしろ彼を落としたい。 ぜひとも落としたい。 彼の為にこのゲームを買おうかって勢いです。
   でも攻略対象に入っているかは微妙なところですね。 難しそう。(涙)
   ああ、だがしかし、一度ついた勢いは止められそうにありません。
   その他にも、バリエーションを増したキャラたちの協力技や、
   新たなバロメーターの追加など、盛りだくさんの『十六夜記』。
   画像の綺麗さは折り紙つきです。 かなり綺麗。
   発売は9/22ですが、予約はすでに始まってますね。
   『遥か3』と連動させて楽しむも良し。 まったく新しい物語として楽しむも良し。
   いまから大期待です。
   『遥かなる時空の中で3』はこちら。


鋼の錬金術師3 神を維ぐ少女  ★★★★★
   第一作『翔べない天使』、 第二作『赤きエリクシルの悪魔』に続く、第三作目のPS2ソフトです。
   アクションRPGです。
   さすがスクエア・エニックスですね。
   回を追うごとに着実にレベルアップしてます。
   前作までにあったストーリーやゲームシステムの問題点を克服したこの作品は、皆さん評価が結構高め。
   スートーリーが完全オリジナルというところも高評価の要因かもしれません。充実度はかなりあがってます。
   最も特筆すべきはやっぱり、今まで動かすことのできなかったアルの操作が可能になったということ。
   プラス、タッグバトル機能の追加でしょう!
   これまではエドしか操作することができず、アルフォンス好きにはちょっぴり寂しかったのではないでしょうか。
   それが今回は、アルが動く。アルを動かせるんですよ、お嬢さん!(笑)
   「三作目にしてようやくだよ、兄さん!」
   なんて、アルの目が輝いていそうですね。
   あとはヒロインの存在ですか。
   彼女に渡すプレゼントによって、色んなイベントを見ることができたり、ストーリーの分岐が多少変わったりと、
   細かい楽しみも用意されてますね。
   とにかく、全体的に前回よりもレベルアップしていてやりごたえは充分。
   あいかわらずストーリーも感動できるし、ゲームシステムは充実してるし、かなり満足が期待できます。
   わたし的には、前回よりもムービーが減っていたのが残念でしたね。
   ですが、2と3とどっちがいい? と訊かれればわたしは断然3を押します!
   なんというか、ストーリーがかなりいいんですよ。
   原作ハガレンの世界観とはちょっと外れた感が無きにしも非ずですが、おもしろいのでオールOK。
   やりやすさも、改良された分3のほうが上ですしね。
   初心者さんにも楽しめるんじゃないでしょうか。
   前作の問題点をここまで克服したスクエニさんの心意気に、評価は星五つということで。

星の王女3 〜天・地・人の創世記〜  ★★★★★
   業界初の女性向18禁恋愛アドベンチャー第三弾!
   なんと今度は全年齢対象の、健全版として帰ってきた!?
   ちょっとびっくりな展開ですが、安心してください、大丈夫です。(何がさ)
   たしかにこの『星の王女3』は全年齢を対象としたソフトウェアと表記されていますが、
   もちろんちゃんと18禁版も用意されています。
   今度の舞台は神話の世界。
   絵もストーリーもグレードアップして、かなり満足度は高いです。
   さすがに三度目ともなると、それまでの問題を解消してゲームとしての完成度も上がっていますね。
   今度は、これまでの『星の王女1、2』のように選択肢を選んでいくだけのものではなくて、ゲーム度もランクアップ。
   そして画像の綺麗さはさることながら、BGMの成長ぶりにも目を見張ります。
   攻略対象のキャラは、幅広い年齢層を用意。
   見た目もプリティな少年(耳とんがってますけど)から、ナイスミドルまで(かなり管理人好み)盛りだくさん!
   いろんな人に楽しんでもらえるよう、企画されているようです。
   普通にゲームを買うと健全版なので、
   18禁版を楽しもうと思う人は、それと一緒に18禁対応ディスクを買わないといけないんですが、
     二枚あわせても前回の価格とさほど変わりません。
   ちょっと高くなってるかな? でも、内容を考えれば許容範囲ですね。
   やはり18禁となると市場が限られてしまうようで、今回の健全版作成は美雷さんの市場開拓が目的なようです。
   まあ、世間には18禁と聞いただけで思わず尻込みしてしまう方もいらっしゃるでしょうしねぇ。
   管理人はまったく全然OKな人間ですが。
   乙女の恥じらいなんて、とうの昔に焼却処理いたしましたとも!
   ていうか、いいじゃないか、18禁だって! 子孫繁栄の重要な過程をちょっとロマンチックに表現しただけじゃないか!
   自分たちだって、こういう営みの果てに生まれて来た存在さ!
   ………なーんて主張してみたりして。
   いや、まぁ、これには色々人それぞれにおっしゃりたいことがあるでしょうね。
   これは管理人の私的な意見ということで。
   とにかく、これまで18禁だからと尻込みしていたあなた! この機会に試してみてはどうでしょう。
   別に18禁対応ディスクを買わなくても、充分乙女ゲームとして楽しめる内容になっているので心配なし。
   つまりはそういうシーンがカットされてるだけですからね。
   キャラがとにかくカッコいいんです。ハマって下さい。
   18禁版で楽しむ時に使う、追加ディスクはこちら。(星の王女3 〜天・地・人の創世記〜 18禁対応追加ディスク)

ふしぎ遊戯 玄武開伝 外伝 〜鏡の巫女〜  ★★★★★
   あのアニメや漫画、小説で大人気となった『ふしぎ遊戯』がついにゲーム化するそうです!
   ずっとゲーム化を望む声があったらしく、今回ついにゲーム化に踏み切ったとか。
   朱雀編ではなく、現在連載中の玄武編なのですが、主人公(つまりはあなた)はオリジナルキャラとして登場。
   多喜子や七星士たちと物語を進めていくようです。まさしくゲーム版のドリーム!
   ただ、連載を読んでいる人はわかると思いますが、攻略対象となる七星の数は少なそう。
   だってまだ全員揃ってませんよね?
   それに、ふしぎ遊戯はけっこう漫画の中でカップリングの妄想が働きやすいので、そういう人には抵抗があるかも。
   でも、それを許せる人はけっこう期待してよいのではないでしょうか。
   人気漫画のゲーム化なので、メーカーも中途半端なことはしないんじゃないかなと思います。
   声優さんも有名どころを押さえてますし、その点は安心できます。
   ゲーム専用のキャラクターが随分増えているようなので、それを目当てにしてもよさそう?
   期待を込めて星五つ!

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