鋼の錬金術師ゲーム第三弾!『鋼の錬金術師3 神を維ぐ少女』 完全オリジナルストーリーでボリューム満点。
                 とうとうアルフォンスの操作も可能になって、益々レベルアップしたこの一作。やらない理由が見つかりません。







 14 パーツ






 夢を、見る―――。




 そのなかでは、今はもう見えないはずの左の視界さえ、はっきりとしていて。






『エド、エドっ! これ、これ見て、これ! この数式!』

『なんだよ、どうした?』








 懐かしい、思い出のような。








『ここまでくれば、もうあと一息だ』

『やったね、兄さん、姉さん!』

『もうすぐ、お母さんを生き返らせられるんだね』








 暖かな、安らぎのような。








『―――っぁ………!』

『…………アル! ―――アルフォンス! 大丈夫か、!』

『………エ、ド…………アル、を………』








 残酷なまでに鮮明な、過去の記憶。









 両の目で見た最後の光景は、自らが創りだしたモノの死んでいく瞬間。

 消え失せた左の腕の、焼け付くような痛みさえ。

 呼吸と共に忘れてしまうほどの。


 それは―――………。













「―――ぇさん、姉さん」

「…………………アル?」


 身体の揺れに反応してうっすらと目を開ければ、そこには巨大な鎧の弟の顔があった。
 表情はわからないけれど、その声から心配しているのがわかる。


「もう夕方だよ。そろそろ帰ろう」

「………………夕方?」

「うん、そう。ハボック少尉が迎えに来てくれてる」


 アルの言葉に、は本の上にうつぶせていた身体をゆっくりと持ち上げた。が、しかしまだ目の焦点が合っていない。
 しばらくぼんやり虚空を見つめていたが、せっかく起こした上体が不意にふらりと傾いた。

 しかも今度は前にではなく横に。


「わーっ、姉さん! しっかり!」


 意識を手放しかける姉に驚き、アルは椅子から落ちようとするその身体を慌てて受け止める。
 すると、またもや眠りの世界へ沈み込もうとしていたがアルの腕の中でなんとか目を開いて。


「…………ごめん、なんか、眠くて………」


 言いながら目をこすり、ふらふらしながら立ち上がった。
 ふと、たった今まで自分がうつぶせていた机の上を見やる。


「あー……、まだ半分も読み終わってない」

「タッカーさんが明日も来ていいってさ」


 行こうと促しながらアルが言うので、はそれにしたがって部屋を出た。
 なるほど、窓から差し込む光はオレンジ色に染まっていて、すでに日暮れが近いのだとわかる。


「ニーナに悪いことしちゃった。遊ぶって約束してたのに」


 すっかり寝こけてしまって、昼前からの記憶がまったく無かった。
 おかげで今日は、読んだ本の冊数もいつもより断然少ない。


「お昼ご飯の時に一度起こしに行ったんだよ。けど熟睡してたから」

「うん。全然覚えてない」


 は出てきた欠伸を噛み殺しつつ、目じりの涙を拭う。
 まだ完全に眠気が去っているわけではないらしく、頭がふわふわしていた。


「お。起きたか

「お姉ちゃん、おはよー」

「ばう」

「…………おはようございます」


 エドはともかく、ニーナやアレキサンダーにまでお目覚めの挨拶をされて、は微妙な笑みを浮かべる。
 何となく、自分よりも小さいニーナが元気に活動していたというのに、もはや昼寝の域を遥かに凌駕した睡眠を取ってしまった自分がちょっぴり情けなかった。
 しかしとりあえず、まずは駆け寄ってきたニーナに謝罪を述べる。


「ごめんね、ニーナ。昨日、遊ぶって約束してたのに」

「ううん、へーき。お兄ちゃんたちが遊んでくれたもん」


 膝をついて目線を合わせてやれば、ニーナはにっこりと微笑んで。


「それに、お姉ちゃん疲れてるんだから寝ないとダメなんだよ」

「うん?」


 少し大人ぶった口調でに言う。
 はニーナのその言葉に、僅かに首を傾けた。


「あのね、お父さんも疲れてると、よく遅くまで寝てるの」


 だから眠たいのは疲れているせいなんだと。
 そう幼い子供に言い聞かせるように胸をはるニーナの姿に、は目をぱちくりさせる。
 けれどその意味を悟ると、すぐにふわりと微笑んだ。

 ちいさな彼女が幼いなりにも、父親のことをどれほど気づかっているのかが手にとるようにわかる。
 はそんなニーナの頭をくしゃりと撫でた。


「そっか。じゃあ今日はたくさん寝たし、明日はきっとニーナと遊べるね」

「ホント?」

「うん。今度こそ約束」


 昨日の別れ際にしたのと同じように、はニーナの小指と自分のそれを絡める。
 嬉しそうに輝くニーナの笑顔。
 互いに笑顔で約束を交わしていると。


「そろそろ行くぞ、。少尉がはやくしろってさ」


 すっかり帰り支度を整えたエドが、そうを促した。
 はもう一度ニーナに笑いかけて立ち上がる。


「じゃあね、ニーナ。また明日」


 玄関先まで見送りに出てきたニーナとアレキサンダーに手を振って、たちはハボック少尉が乗ってきた車へと乗り込む。

 車のサイドミラーに映る、自分たちに向かって元気良く手を振るニーナの姿を見ながら。









           *









 次の日。

 朝起きた時にはすでに、今にも泣き出しそうな曇天が広がっていた。
 まるでここ数日の好天が嘘だったかのような、そんなどんよりとした湿気を含んだ空気が身体にまとわりついてくる。


「今日は降るな、こりゃ」

「そうだねぇ。外で遊べないならニーナと何しよっかな」

「…………資料探せよ」


 自分と同じように空を見上げた妹の横顔を見て、エドは思わず突っ込みを入れた。
 遠くの方で低く雷鳴が轟いているのが聞こえる。


「こんにちはー。タッカーさん、今日もよろしくおねがいします」


 アルが戸口の呼び鈴を鳴らし、慣れた様子でタッカー邸の扉を開けた。
 が、しかし、屋敷の中からは何の反応も返ってこない。


「あれ? 誰もいないのかな?」


 いつもなら、まず真っ先にアレキサンダーが凄い勢いで飛び出してきて、その後ろからニーナが嬉しそうに駆けてくるはずなのに。
 今日に限ってなぜか、あたりはひっそりと静まり返っている。
 はアルに続いて屋敷の中へ入った。


「どこかに出かけたのかな? アレキサンダーの散歩とか?」

「鍵もかけずに無用心だな。タッカーさん、ニーナ?」


 エドとアルは声をかけながら奥へと進んでいく。
 はその後を、同じようにきょろきょろ周囲を見回しながら歩いた。


 ふと。


 一つの部屋の扉が、半開きになっているのを見つける。
 その時は、初めてタッカー邸に来た時にこれと同じような状況でタッカー氏に見つかったことを思い出した。
 あの時の部屋はそう、物置部屋だという言葉どおり、足の踏み場さえろくに残っていないほど乱雑に膨大な資料が詰め込まれていて。

 は引き寄せられるように、その半開きの扉を以前と同じように押し開く。


「………………練成陣?」


 古ぼけた色の床に黒檀で描かれた紋様。
 間違いなくそれは何かの練成陣だった。
 しかも、すでに練成を行った後だとわかる。

 タッカー氏は錬金術師。それも自分たちと同じ国家錬金術師だ。
 家の中で練成を行ったところで何の不思議もない。
 だからこうして練成陣が残っていることも、決しておかしなことではないのだけれど。

 なぜかその時の頭に浮かんだのは、あの物置部屋で見つけた黄ばんだ一枚の紙だった。
 読んでいる途中でタッカー氏に取り上げられてしまったあの紙片。

 取り上げられる直前まで頭の中で組み立てかけていた理論と数式が、この練成陣を前にして再びの頭の中に現れたのだ。
 その途端、絡まっていた何かが、ここずっと頭のどこかで引っかかっていた疑問が、音を立てて崩れていくような気がする。


 予測した仮定と、生じる矛盾と。


 の中で音を立てて、多くのパーツが急速に組みあがろうとしていた。


「なんだ、いるじゃないか」


 しかしそれは、廊下から聞こえてきたエドの声に突然遮られる。
 はっとして意識を取り戻したは、中途半端な状態の頭を抱えながら、扉から顔を覗かせて声のした方の廊下の先を見やった。
 すると、アルがこちらを向いて手招いていて。


「姉さん、こっち」

「あ………うん」


 招かれるままにはそちらへと足を向けた。
 頭の中にある解けかかった疑問が、まるで鉛のように沈殿している。
 これならば、まったくわからなかった時のほうがまだすっきりしていたと思えるほど、それは存在を大きくしていたのだけれど。

 それでもまずは挨拶をするのが先かと、自制心でもって現実に意識を縛り付けた。
 エドが押し広げた扉から、も同じように部屋を覗き込む。


「ああ、君たちか」


 人当たりのよい、笑みを含んだ口調。
 暗い部屋に膝をついているタッカー氏は、笑ってこちらを見上げていた。
 そして言う。


「見てくれ、完成品だ」


 暗い部屋の影に浮かぶ二つの光を指して。


「………………っ!」

「人語を理解する合成獣だよ」


 タッカー氏がそう言って示す前に、は知らず息を呑んでいた。


 部屋の暗闇から姿を現したのは、一匹の合成獣で。


 自然界ではありえないはずの出で立ち。
 どこか違和感を感じるそれは、合成獣の合成獣たる証だ。

 けれど、の身体は急速に温度を下げる。


 まるで閃くように思い至った仮定に。

 そうやって思い至ること自体罪深いと感じてしまうほど、その考えはあまりにも残酷で、許しがたく。


「姉さん? どうしたの?」


 無意識の内に一歩足を引いたは、すぐ後ろに立っていたアルにぶつかりその両肩を支えられた。
 アルは心配そうに声をかけるけれど、何も言うことができない。
 否、それさえも気づいていないのかもしれなかった。

 の頭の中を満たすのは、仮定を裏付ける為の証拠。
 あってほしくないと心のどこかで望みながら、科学者たる彼女の脳は容赦なく事実を列挙していく。


 一昨日に見たあの紙片。

 先ほどの部屋にあったあの練成陣。

 そして、今目の前にいる、合成獣―――。


 その全てが鍵となり、パズルのピースが完全に埋まってしまった。


「…………なんて、ことを……」

「姉さん?」


 搾り出した呻きのようなそれは、肩を支えていたアルにもはっきりとは聞き取れなかった。
 その間にも、の変化に気づいていないエドは、初めて見る人語を解する合成獣を驚きの顔でまじまじと見ている。


「あー、査定にまにあってよかった」


 これでしばらくは研究費の心配をしなくて済むと。
 そう安堵の息をつくタッカー。
 エドは合成獣の前に膝をつき、教えられた自分の名前をつたない発音で繰り返している様をじっと見ていた。

 ただだけが、唇をかみ締めてきつく拳を握る。
 手袋の下の機械鎧が、ギリリと無機質な音を立て。


「……………タッカーさん、あなた、二年前にもこうやって国家資格を取ったんですか」

「うん? ああ、そうだよ。人語を話す合成獣が僕の研究テーマだからね」


 それがどうかしたかい、と、それまでと同じ穏やかな様子で尋ねる男の眼鏡の奥は、レンズが光を反射してよく見えなかった。
 けれど、浮かべているのは間違いなく笑み。

 アルとエドは、どこか様子のおかしいを不思議そうに見やる。
 僅かに俯き、前髪で顔の半分を隠してしまっているの両手が、ひどく強く握り締められていることにエドが気づいた。
 そして、その機械鎧ではない生身の右手を包む白い手袋が、じわじわと鮮血に染まっていくのを見つける。


「っおい、! おまえ何やって………!」


 エドは慌てて駆け寄ろうした。
 駆け寄って、血の滲むの手を取ろうとしたのだけれど。

 しかし、立ち上がりかけたその背後で紡がれた、つたなくかすれた声がその動きを引き止める。


「………お、にい……ちゃ」

「―――!!」


 一瞬にして凍りつくエドの空気。
 驚愕と、衝撃と。

 はただ拳を握り締め、荒れ狂う激情をもてあましているようだった。
 エドは再び、合成獣の前に膝をつく。


「………タッカーさん、その研究が認められて資格取ったの、いつだっけ」

「ええと………二年前だね」


 いつもよりトーンの低いエドの声に、問われたタッカーはそう答える。


「奥さんがいなくなったのは?」

「……………二年前だね」


 同じ答えを、繰り返す。


「もひとつ質問いいかな」


 それが意味することを、もうすでに察していながら。









「ニーナとアレキサンダー、どこに行った?」





2005/08/21 up




――― 勝手にうんちく はちがつはつか ―――

★ 評価は五段階 ★

New!鋼の錬金術師3 神を維ぐ少女  ★★★★★
   第一作『翔べない天使』、 第二作『赤きエリクシルの悪魔』に続く、第三作目のPS2ソフトです。
   アクションRPGです。
   さすがスクエア・エニックスですね。
   回を追うごとに着実にレベルアップしてます。
   前作までにあったストーリーやゲームシステムの問題点を克服したこの作品は、皆さん評価が結構高め。
   スートーリーが完全オリジナルというところも高評価の要因かもしれません。充実度はかなりあがってます。
   最も特筆すべきはやっぱり、今まで動かすことのできなかったアルの操作が可能になったということ。
   プラス、タッグバトル機能の追加でしょう!
   これまではエドしか操作することができず、アルフォンス好きにはちょっぴり寂しかったのではないでしょうか。
   それが今回は、アルが動く。アルを動かせるんですよ、お嬢さん!(笑)
   「三作目にしてようやくだよ、兄さん!」
   なんて、アルの目が輝いていそうですね。
   あとはヒロインの存在ですか。
   彼女に渡すプレゼントによって、色んなイベントを見ることができたり、ストーリーの分岐が多少変わったりと、
   細かい楽しみも用意されてますね。
   とにかく、全体的に前回よりもレベルアップしていてやりごたえは充分。
   あいかわらずストーリーも感動できるし、ゲームシステムは充実してるし、かなり満足が期待できます。
   わたし的には、前回よりもムービーが減っていたのが残念でしたね。
   ですが、2と3とどっちがいい? と訊かれればわたしは断然3を押します!
   なんというか、ストーリーがかなりいいんですよ。
   原作ハガレンの世界観とはちょっと外れた感が無きにしも非ずですが、おもしろいのでオールOK。
   やりやすさも、改良された分3のほうが上ですしね。
   初心者さんにも楽しめるんじゃないでしょうか。
   前作の問題点をここまで克服したスクエニさんの心意気に、評価は星五つということで。

星の王女3 〜天・地・人の創世記〜  ★★★★★
   業界初の女性向18禁恋愛アドベンチャー第三弾!
   なんと今度は全年齢対象の、健全版として帰ってきた!?
   ちょっとびっくりな展開ですが、安心してください、大丈夫です。(何がさ)
   たしかにこの『星の王女3』は全年齢を対象としたソフトウェアと表記されていますが、
   もちろんちゃんと18禁版も用意されています。
   今度の舞台は神話の世界。
   絵もストーリーもグレードアップして、かなり満足度は高いです。
   さすがに三度目ともなると、それまでの問題を解消してゲームとしての完成度も上がっていますね。
   今度は、これまでの『星の王女1、2』のように選択肢を選んでいくだけのものではなくて、ゲーム度もランクアップ。
   そして画像の綺麗さはさることながら、BGMの成長ぶりにも目を見張ります。
   攻略対象のキャラは、幅広い年齢層を用意。
   見た目もプリティな少年(耳とんがってますけど)から、ナイスミドルまで(かなり管理人好み)盛りだくさん!
   いろんな人に楽しんでもらえるよう、企画されているようです。
   普通にゲームを買うと健全版なので、
   18禁版を楽しもうと思う人は、それと一緒に18禁対応ディスクを買わないといけないんですが、
     二枚あわせても前回の価格とさほど変わりません。
   ちょっと高くなってるかな? でも、内容を考えれば許容範囲ですね。
   やはり18禁となると市場が限られてしまうようで、今回の健全版作成は美雷さんの市場開拓が目的なようです。
   まあ、世間には18禁と聞いただけで思わず尻込みしてしまう方もいらっしゃるでしょうしねぇ。
   管理人はまったく全然OKな人間ですが。
   乙女の恥じらいなんて、とうの昔に焼却処理いたしましたとも!
   ていうか、いいじゃないか、18禁だって! 子孫繁栄の重要な過程をちょっとロマンチックに表現しただけじゃないか!
   自分たちだって、こういう営みの果てに生まれて来た存在さ!
   ………なーんて主張してみたりして。
   いや、まぁ、これには色々人それぞれにおっしゃりたいことがあるでしょうね。
   これは管理人の私的な意見ということで。
   とにかく、これまで18禁だからと尻込みしていたあなた! この機会に試してみてはどうでしょう。
   別に18禁対応ディスクを買わなくても、充分乙女ゲームとして楽しめる内容になっているので心配なし。
   つまりはそういうシーンがカットされてるだけですからね。
   キャラがとにかくカッコいいんです。ハマって下さい。
   18禁版で楽しむ時に使う、追加ディスクはこちら。(星の王女3 〜天・地・人の創世記〜 18禁対応追加ディスク)

ふしぎ遊戯 玄武開伝 外伝 〜鏡の巫女〜  ★★★★★
   あのアニメや漫画、小説で大人気となった『ふしぎ遊戯』がついにゲーム化するそうです!
   ずっとゲーム化を望む声があったらしく、今回ついにゲーム化に踏み切ったとか。
   朱雀編ではなく、現在連載中の玄武編なのですが、主人公(つまりはあなた)はオリジナルキャラとして登場。
   多喜子や七星士たちと物語を進めていくようです。まさしくゲーム版のドリーム!
   ただ、連載を読んでいる人はわかると思いますが、攻略対象となる七星の数は少なそう。
   だってまだ全員揃ってませんよね?
   それに、ふしぎ遊戯はけっこう漫画の中でカップリングの妄想が働きやすいので、そういう人には抵抗があるかも。
   でも、それを許せる人はけっこう期待してよいのではないでしょうか。
   人気漫画のゲーム化なので、メーカーも中途半端なことはしないんじゃないかなと思います。
   声優さんも有名どころを押さえてますし、その点は安心できます。
   ゲーム専用のキャラクターが随分増えているようなので、それを目当てにしてもよさそう?
   期待を込めて星五つ!

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