0 プロローグ
『―――ル……アル! アルフォンスっ!!』
部屋に、悲痛な叫びが木霊する。
『……………エ、ド』
所狭しと積み上げられた書物の山。
床に描かれた錬成陣は、いまだ発光を続けていて。
錬成の名残のプラズマと風が、室内を縦横無尽に駆けていた。
『? 大丈夫か、…………っ!』
三人でよく遊んだ。
懐かしいあの部屋はもう、どこにも面影がなく。
『アル…………アル、フォンス………』
『くそっ! こんな事があってたまるか!』
床に転がっているのは、おもちゃでも、力学の模型でもない。
あるべきものを失い、血にまみれた、二人の身体。
『こんな………こんな、はずじゃ……』
『エド………アルを………』
―――痛みを伴わない教訓には意味がない。
『畜生………っ、持っていかれた…………!!』
―――人は何かの犠牲なしに何も得ることは出来ないのだから。