0 プロローグ






『―――ル……アル! アルフォンスっ!!』





 部屋に、悲痛な叫びが木霊する。





『……………エ、ド』





 所狭しと積み上げられた書物の山。


 床に描かれた錬成陣は、いまだ発光を続けていて。


 錬成の名残のプラズマと風が、室内を縦横無尽に駆けていた。





? 大丈夫か、…………っ!』





 三人でよく遊んだ。


 懐かしいあの部屋はもう、どこにも面影がなく。





『アル…………アル、フォンス………』


『くそっ! こんな事があってたまるか!』





 床に転がっているのは、おもちゃでも、力学の模型でもない。


 あるべきものを失い、血にまみれた、二人の身体。





『こんな………こんな、はずじゃ……』


『エド………アルを………』









 ―――痛みを伴わない教訓には意味がない。









『畜生………っ、持っていかれた…………!!』











 ―――人は何かの犠牲なしに何も得ることは出来ないのだから。





2005/02/10 up




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